ベニドルムを舞台に、父親および高級ライター“タリスマン”を探す不正まみれの女刑事が繰り広げるダークな犯罪スリラー。マドリード三部作(と、ここでは呼ぶ)『Cómo dejar de escribir(いかにして書くのを止めるか)』、『Sánchez(サンチェス)』、『Gordo de feria(祭りの惨事)』(当サイト2021年紹介作品 http://www.newspanishbooks.jp/book-jp/gordo-de-feria)において、マドリードを夜行性でアウトローな、かなりシュールな都市として描いた作者のエステル・ガルシア=リョベトは、東国三部作の第一作となる本作『Spanish Beauty(スパニッシュ・ビューティ)』では、スペイン東部のリゾート地ベニドルムを、英国マフィアやロシア人大富豪が暗躍し、地下に薄汚いビリヤード場、地上に建設中の摩天楼が立つ街に仕立てた。この街で汚職警官ミケーラは、1960年代のロンドンでその名を知られた双子のギャング、クレイ兄弟が所有していたライターを何としても手に入れなければならないのだ。