568年、ローマ帝国から実質的に忘れ去られ、互いの間で争いを続ける多様で脆弱な民が住むイスパニアは、混沌と戦いが支配する危険な地であった。しかし侵略者である西ゴートのレオヴィギルドは、唯一の王とすべての民のためのただひとつの法律を持つ強く結束した王国を夢見ていた。ふたりの息子、ヘルメネギルドとレカレドのための平和な王国、イスパニアだ。初めは無慈悲で死を招く戦士ヴァルタリオだけが王のこの夢を信じた。王の周りは陰謀や背信や反乱が渦巻く。
本書は、多くの片隅が認められる建造物だ。我々を金縛りにする恐れと不安の片隅に、我々を破壊しかねないやむにやまれぬ衝動の片隅。だがそれだけではなく、ゲームの喜びの片隅、持っているとは思わなかった、自分を大きくする内側の力を見つける片隅もある。ダビッド・モンテアグードが、書かずにいられなかった題材に立ち返った、非常にボルテージの高い短編集。読者は心をつかまれ、自分の姿をそこに認めるだろう。
カルロ・マントバニ医師はサン・マルコス病院の産科に勤務している。⾼名な産科医で、同僚や患者に尊敬されているが、実は妊婦の殺⼈犯であることを誰も知らない。⾃然死のように偽装しているため⻑年犯罪が露呈することはなかったのだ。同僚のひとり、ディエゴ・ハッチャー医師が患者の不審死を調べ、殺⼈犯が存在することを発⾒。⾃分の疑念を病院の幹部に話すことにした。しかし、驚いたことに幹部は黙秘するよう命じ、真実を無視して殺⼈犯を擁護する。こうして母親たちの命がかかった死のゲームが始まる。
1950年代初頭のある朝、アストゥリアス出身の青年パトリシオがハバナ港に降り立つ。パトリシオは、内戦後でまだ暗い影に覆われたスペインの村を出て行きたい一心で、裸一貫だが一旗あげてやろうと意欲満々だった。 光に溢れたハバナの街は彼を温かく受け入れ、友人もすぐにできる。街の象徴であり誇りであるデパート「エル・エンカント」ですぐに仕事を見つけたパトリシオは出世し始め、より責任ある地位について新しい世界への扉を開くが、それは同時に、彼に対して多くの妬みを生むことでもあった。
1938年。ヒットラーにより世界平和は脅威にさらされていた。ナチスはどの国に対しても不滅の体制を誇っていた。だが、実際にはそうではなかったのは、ある意味、ガルボという偽名で知られるフアン・プジョルがいたからだ。ガルボは自信に満ち、更にはごまかし、大胆さ、尽きない想像力、人間的魅力などありあまるほどの長所があった。1940年、彼はそれまでで最も重大な決断を下す。ナチスを倒すまで闘うこと、しかもそれをドイツ軍の内側からしようというのだ。しかし彼はひとりではなかった。
20世紀の初め、ひとりの孤児が衝撃的な見世物を目の当たりにした。腹話術をする手品師が、金属の人形をしゃべらせ動かしている。しかし孤児は、手品だけではこの並外れた見世物は説明がつかないと思う。こうして孤児は手品師のパレルモ教授と出会い、100年もの歴史を見る特権を得た観客となり、想像もつかない最高の冒険をする。しかし、それには高い代償を払わなければならなくなる……。パレルモ教授とそのしゃべる金属の人形は、20世紀が始まろうとしていた時代、多くの人々を魅了していた。
ローラは将来有望な小児科医、39歳。恋人と別れたばかりだ。母親願望によって、最近自分の人生の意味に疑問を持ち始めている。診療で、ガンビア人で彼女より若く4人の子持ちのアミナタに会う。移民で、専業主婦。読み書きはできないが、観察眼のある誇りに溢れた女性で、自分が教えられてきた主義や伝統に疑問を持ち始めている。多分それは長女ビンタとのとげとげした言い争いが原因かもしれない。
21世紀、君たちの世界。バスクの霊山アンボトを頂く土地に、ひとりの向う見ずな神が他の神々に先んじていた。夜の帝王ガウエコだ。他の神々はまだ眠っている。静かに! 死者を起こしてはいけない。彼らが目を開けないように祈れ。君たちの伝説時代よりずっと前、岩山には悪魔のような獣が住み、闇が夜を支配していた。霧の海の下を何世紀もの時が流れ、ダンスと闘いは血と泥に覆われた。やがて、時は過ぎ、彼らは忘れられた。今までは。 これらの忘れられた神々が再び目を覚まそうとしている。
「あなたの耳に入っているかどうかわからないけど、ロベルトが亡くなったの」。こんなふうに始まる、かつての同級生ロシオのメッセージを読んだとき、エレナはドキッとした。文学の教師に恋をしたと気づいたあの日と同じように。今は彼の死、そして思い出と対峙しなければならない。エレナは死がどんなものか知っている(両親は、それぞれ全く異なる状況で亡くなった)が、ロベルトの死はすべての亡者を揺さぶる。エレナは毀誉褒貶相半ばするグルメ評論家だが、今は途方に暮れている。