若き精神科医ヘルマン・ベラスケスは1939年に亡命し、スイスでドクター・ゴールドスタイン家に迎え入れられ15年を過ごした後、1954年、シエンポスエロスの女性精神病院で働くためスペインに戻る。ヘルマンはそこで、とても知能が高い偏執狂的殺人犯・アウロラ・ロドリゲス=カルバリェイラと再会し、また、若い助手マリアと出会う。マリアに惹かれたヘルマンは、彼女に拒絶される訳が理解できず、彼女の人生には多くの秘密が隠されているのではと感じる。精神病院の庭師の孫娘という彼女のつつましい出自、小間使いとして長年過ごしたこと、彼女の報われなかった愛の物語、並行してヘルマンがスペインに戻ったわけが語られる。それぞれの過去から逃げたい似た者同士のヘルマンとマリアはチャンスに賭けたいと望むが、ふたりが住む国は、道徳的な罪が犯罪となり、ピューリタン主義があらゆる種類の虐待や人権侵害を覆い隠す屈辱的な国だった。