日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。
今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました:
野谷文昭(選考委員長:名古屋外国語大学教授・東京大学名誉教授) (以下あいうえお順/敬称略) 酒井七海(元書店員)/ 塩田知子(フリーランス編集者)/ 吉田彩子(清泉女子大学名誉教授・スペイン王立コルドバ・アカデミー会員)/ 米田雅朗(新宿区立大久保図書館館長)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)
青砥直子 / 今木照美 / 宇野和美 / 小原京子 / 笠原 未来歩 / 佐藤晶子 / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 轟 志津香 / 長神末央子 / 平野麻紗 / 宮崎真紀 / 村田名津子 / 横田佐知子/ 吉田 恵 / Amadeu Branera
バスク武装組織ETAが武装放棄を発表したとき、ビトリは、テロリストに殺された夫の墓前で、彼らが住んでいた家に戻る決心をしたと報告する。彼女自身と家族の人生をめちゃくちゃにしたテロ事件の前も後も、彼女に嫌がらせをした人々と同じ場所で暮らすことができるだろうか? ビトリの存在は、村の、特に隣人ミレンの見せかけの平穏を乱すことになる。ミレンはかつて親友だったが、ミレンの息子のホセ・マリは投獄中のテロリストで、ビトリにとって最悪のテロ事件の容疑者だった。
獣脚亜目の恐竜たちは1億3千500万年もの間地球を支配していた。ほとんどが肉食の獣脚亜目に、私たちは畏敬をこめた恐れを抱きつつも魅せられる。直系の子孫は現在では鳥類として世界中の大陸で私たちと共存している。本書はこれまでに出版された獣脚亜目の記録の中で、最も詳細で厳密な書籍である。2000以上の図解や説明図と、300以上のカラー復元図を駆使して約1000種に上る有名な恐竜を紹介する。各章の内容は以下のとおり。「比べてみよう」獣脚亜目のうち最大のものはどれか、最小のものはどれかを示す。
ダミアンは失業して以来混乱している。ある日骨董市でちょっとした盗みを働き、たんすに隠れるが、彼が入ったままたんすは売られてしまう。ルシアとフェデという夫婦の部屋に運ばれたたんすの中で、ダミアンは家具の一部であるかのようにそこに居着く。ありえない設定を、いかにももっともらしくラストまでもっていく巧みさが、小説に格別の緊張感を与える。ダミアンは、隠れ場所からルシア夫婦を観察するうちに、ルシアの心や恐れや夢に寄り添うようになる。
SNSで話題になりベストセラーになった小説。事実に基づくストーリーが読者を魅了する。盲導犬の目を通して語られた友情と恋愛、克服のゆかいな物語。クロスは陽気で腕白な盲導犬。マリオは人生の道を切り開こうとしている目の不自由な若者。ひとりと1匹は強い絆で結ばれたチームだ。本書『僕の小さな目で』は、クロスが人間世界で引き起こす波乱に満ちたゆかいな出来事を語った感動的な小説だ。作者のオルティスもクロスと同じくらい腕白なスポックと言う盲導犬を持ち、本作で自身がよく知る現実を語っている。
1615年のマドリード。バルセロナから到着したばかりの若者が、迷路のように入り組んだ凍てつく人けのない道を歩き回り、ようやく目的地にたどりついた。死期が近いひとりの老人が毎日通うみすぼらしい居酒屋だ。老人はミゲル・デ・セルバンテス、『ドン・キホーテ』の生みの親だ。若者は作家セルバンテスに謎めいた小さな古い櫃を渡すという使命をおびていた。櫃と引き換えに、セルバンテスは40年前の出来事を語らねばならない。亡命の途中でバルセロナに避難したおたずね者の郷士だった時のことを。