日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)
市橋栄一(紀伊國屋書店)/ 川地麻子(タトル・モリ エイジェンシー)
佐々木一彦(新潮社)/ 野谷文昭(東京大学)/ 由里幸子(元朝日新聞編集委員)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子 / 井原美穂 / 宇野和美 / 尾河直哉 / 小原京子 / 柏倉恵 / 児玉さやか / 佐藤まゆり / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 高部良 / 仁平ふくみ / 長谷川晶子 / 平野麻紗 / ハビエル・フェルナンデス=サンチェス / 村田名津子 / モンセ・マリ / 安田晶 / 矢野真弓 / 横田佐知子 / 吉田恵
スペインで最も名高い編集者のひとりの回想録。本と同じだけ古くからあるこの職業の、いわば弁明の書である。この中でムクニックは、迫りくるデジタル革命の中でも、編集者の仕事は削除したり排除したりできない職業だとしている。すなわち著者が過ちをおかさないよう守り、そして読者をもまた過ちをおかさないよう守るのが編集者なのだ。
歴史、神話と、回想的物語を集めた本。
地中海は迷宮のように入り組んでいるが、日のさした冬の広場のようにふところが深い。この海を愛してやまない作者が、鮮やかな色彩を使いざっくりとした筆づかいで描いた印象派の絵画のように、示唆に富んだ地中海の姿をうきぼりにする。地中海には、3つの大陸の風景と人々が顔をのぞかせる。すべてはその海岸から始まったのだ。
ひとりの女が夫を精神病院に入院させた後、列車でマドリードへ帰るときのこと、列車の中で見知らぬ男に、彼の人生の話を聞きたくないかといきなりたずねられる。男は先刻の精神病院で働いている精神科医。患者の語ったことや書いたものを通して人格障害を研究しているという。その文書が入ったファイルを、男はたずさえていた。ところが、男は途中駅でしばしホームに降りたときに列車に乗り遅れ、ファイルは女の手に残される。こうなると、読者は女とともにファイルの中身を読みたくてたまらない。
実際にはいるわけのない動物たちの、独創的で楽しい寓話集。空想の世界ではどんな虫も動物もありえる。そんな空想世界でダニエル・モンテロが読者を驚かす。意表をつくイラストレーションに、読者の目はくぎづけ。