1938年。ヒットラーにより世界平和は脅威にさらされていた。ナチスはどの国に対しても不滅の体制を誇っていた。だが、実際にはそうではなかったのは、ある意味、ガルボという偽名で知られるフアン・プジョルがいたからだ。ガルボは自信に満ち、更にはごまかし、大胆さ、尽きない想像力、人間的魅力などありあまるほどの長所があった。1940年、彼はそれまでで最も重大な決断を下す。ナチスを倒すまで闘うこと、しかもそれをドイツ軍の内側からしようというのだ。しかし彼はひとりではなかった。良家の生まれで美しくて強い娘アラセリ・ゴンサレスが妻となり、支えとなった。常軌を逸した、まったく非論理的な試みに思えた。しかしそうではなかった。アラセリのお陰で、後にガルボはヒットラーを欺いたスパイとして知られることになった。上質の文章とすばらしいユーモア感覚を備えた作者が、このふたりのスペイン人の物語を綴る。