スペイン文学の歴史を変えた三部作が、初めて1冊にまとめられた。芸術が語りだし、詩的な散文で読む者をとりこにする小説と、古いポラロイド写真の想起力を持つ野心的なプロジェクトに、漫画家・イラストレーターのペレ・ジョアンがコラボし挿絵をつけた。アグスティン・フェルナンデス=マリョは、ほんの少しピントのずれた詩的で、どこか心を乱す空気を作り出すが、物語が進むにつれて、読む者の心は登場人物に寄り添っていく。これは古典的な意味でのミステリーでも、サスペンスでもホラーでもなく、どこか、もっと不気味なもの、動きだした物体のように我々の眼前につきつけられる現実そのものだ。登場人物は、すっかり理解しあうことのないまま現実のあとを追いかけていく。それぞれが彼自身でありその他大勢でもあり、ある時起こったことは、再び繰り返される運命にあることを直観できないまま、いくつもの人生を守っていく。