新たなやり方で人生に立ち向かうための羅針盤となるノート。執筆を通してのパンデミックへの回答。すべてに感染する微細なものによって引き起こされた空前絶後の大異変の後、ひとつの声が熟考し、たくらみ、思い出し、朗誦し、そして祈る。パンデミックによる世界的危機の下に、もっと局地的だが類似の規模、あるいはさらに重大かもしれない別の伝染病がひそんでいる。我々の暮らし方、現実や言葉と我々との関係の病だ。声とは、道理の純粋な実践である。その声が、時には語りかけるように、時には芝居のモノローグや、詩的、あるいは哲学的な問いかけの抑揚をつけて、心のメロディーのなかに主題と変奏を紡ぎだしていく。そこでは、重々しい低音からユーモラスなものまですべての音が、観念的かつ音楽的な一種のフーガの技法の中に編みこまれていく。