本書は類まれな本だ。集団的記憶と、頑なに守られてきた個人の秘密の間で生き残った伝説が解き明かされる。1935年1月、サンタ・クルス・デ・ラ・パルマで、街中が大騒動となる悲劇が起きた。事件の手がかりと、家長ミスター・サバス率いるアーティスト一家・ジョルジェビッチ家一族の証言により、スペイン内戦中、内戦後のトティ・サーカスの紆余曲折が際立つ、壮大な家族史が読者の前に繰り広げられる。これは小説スタイルの年代記。物語とニュースを興味深く織り交ぜ、写真素材が添えられている。全編を貫く語りの巧みさと洗練された文学スタイル、そして100年近くもの間ベールに包まれてきた、説得力のある実話の不思議な魅力が読者を眩惑する。