ADHD(注意欠陥多動性障害)は現在、児童精神病理学において議論の的となっている症状のひとつ。
ADHDと診断される子どもは多いが、治療はほぼ薬物のみに限られており、そのため医療化と問題の慢性化につながる危険性が伴う。心理学的アプローチのない薬物療法では、症状は改善するかもしれないが、望ましい人格の成熟と進歩はもたらされない。
本書では、児童青少年の精神機能の複雑さ、思考、特に注意力、そして子どもの心の傷つきやすさと周囲の影響との相互関係に留意しつつ、この症状の原因、診断、治療について考察を試みる。