■あらすじ/内容
グスは猟犬だが、狩りには行きたくない。仲間の猟犬たちと一緒に仕事をしようとしないグスに不満をもつ飼い主には怒られてばかり。でもグスは、獲物を追いかけるより、飼い主の子どもと遊ぶ方が好きだ。大好きな森に出かけ、ソーセージのように長い体を活かして、友だちになっている森のいろんな動物を助けている。年寄りや子ども、ケガをしている動物たちを背中に乗せて、バスのように運んであげたり、岩場の間に体を置いて橋になって移動するのを手助けしたり、川の岸から岸へ運んであげたり。
森の友だちと楽しく過ごしていたグスだが、飼い主にまたこっぴどく叱りつけられてしまう。いやになったグスは、こっそりと森の中へ逃げる。森には、他の猟犬たちにおびえる動物たち。「戻ってこい!」「この役立たず!」「みんなに嫌われるぞ!」グスは飼い主の怒鳴り声が聞こえないほど離れた、遠くの安全な場所に友だちを移動させ、そこで彼らと穏やかに過ごすのだった。
■所感
のんびり屋で、穏やかな風貌のグス。飼い主に求められる仕事はこなせず罵倒されるが、まったく意に介さずに穏やかに過ごすその表情や行動は、誰かに無理強いされること、自分がやりたくないことをやるのではなく、自分の気持ちに忠実に生きること、自分が一緒にいたい人といることの大切さをおしえてくれる。何かと引き換えにではなく、ごく自然に、自分の気持ちのままに行動しながら友だちを助けるグスのやさしい表情と、助けられた友だちの動物たちの穏やかな表情は、読む者に人と人とのつながり、平和に生きることの喜びや、身近な友だちを大事に思う気持ちを思い起こさせる。また、本当にやりたくないことはやらない、自分が快適だと思う人生を生きることの魅力をグスや友だちの動物たちの穏やかな表情におしえられるだろう。劇的な展開があるわけではなく、シンプルなストーリーだが、読むたびにあたたかい気持ちにさせてくれる、眠る前に何度も読みたくなるような、子どものお気に入りの一冊になり得る作品。
■試訳(冒頭から)
グスは かりにいくのがすきじゃない
かいぬしのりょうしは はらをたてて イライラ
「おい、はしれ!」「なかまをおうんだ!」
そうどなられても グスはかわいそうなどうぶつたちを おいかけたくない
それよりも かいぬしのこどもとあそぶほうが すきなのだ
グスのからだは ソーセージみたいにながくてやわらかい
だから からだをのばしたり ちぢめたりして みんなのやくにたつことができる
グスがだいすきなのは もりにいくこと
もりにはたくさんのともだちがいるし かならずだれかが たすけをひつようとしている
おとしよりや ちいさなこども けがをしているどうぶつもいる
グスはさんぽがてら そんなどうぶつたちをせなかにのせて バスになったりする
ゆっくりあるくともだちのために はしになることも
かわをわたりたいともだちがいれば グスはいつもみずあびのついでに のせてあげる
「はやくみんなとはしれ!」
「さあ、うごくんだ! おまえのしごとだろ!」
「うさぎをつかまえるんだ!」
でもグスは かいぬしのどなりごえもかまわず もりのなかににげこむ