Bartleby Editores, S. L.
バートルビー
出版社
詩の本を地道に出版している。特長となっているのが、二ヶ国語版と、二十世紀後半のスペインのす れた詩人の作品の再刊。スペインでは未刊行のvーロッパやラテンアメリカのフィクションにも挑んでいる。
本書は父親と息子(テオ・アバド、戦場レポーター、本書の語り手)の愛情の物語であると同時に、孤独な女たちと、不当な武力紛争から帰還した英雄たちとの愛情の物語である。さらには、アンティゴネーとイーピゲニアというギリシャ文学の神話的登場人物に対するオマージュでもある。アンティゴネーが兄を埋葬しようとするように、ジュディット(この小説の主人公)は60年代にフランコ体制に殺害された両親の遺体を見つけて埋葬したいと思っている。イーピゲニアが生贄になったことは、エディパ、タマラ、ラ・ニニャといった女性たちの遺体で体現される。舞台はマドリードの人口密集地、エントレビアス地区という実在の魅惑的な地区。戦争とそれに伴う不正、他人の人生を決定する権力は誰が持っているのか、いないのか、といったことを考えさせる一冊だ。
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文学
エントレビアス モナムール
Entrevías mon amour
フスト‧ソテロ
Justo Sotelo
Bartleby Editores, S. L.
34歳の女性マメンの人生の転変を綴った小説。マメンは過去の辛い体験から、人里離れたところで孤独に生きてきたが、地中海沿岸のとある灯台に住む少女と数日間を共にした後、彼女を雁字搦めにしていた蜘蛛の糸が少しずつほどけていく。何もかも、人さえも見た目どおりではないこの地。海、空、タコ、灯台、そしてその灯台に住む人々も。象徴性とユーモアに溢れた物語だが、文章は非常にシンプルで、心地よい読後感を与える。
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文学
魚の味の波
Una ola con sabor a pez
ヌリア‧リエラ=カリーリョ
Nuria Riera Carrillo
Bartleby Editores, S. L.
ハイメの血管の中にいる女性の幽霊が、その創造主に恋をし、あり得ないことを夢見るようになる。目覚めることだ。幻想の世界では、人類が再創造した空想上の生き物たちが、危うい均衡を保って共存しているのだが、幽霊の熱い願いがその世界を打ち砕く。一方ハイメの日々は、大学時代の過酷な毎日から穏やかな日常へと移行する。『目覚め』はコントラストの小説だ。生々しさと真正、自由奔放さと夢、ロマンティックとエロティック。不敬だが優しいユーモア/ホラー感覚で融合した完璧なコラージュだ。ハラハラドキドキ最後まで読者に期待を持たせ続ける、しっかりとした構成に支えられたコラージュである。
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