誰もが一度は家族の一大行事を行う機会があるはずだ。機会よりも苦行と言えるのだが。本作の主人公ルシアも一風変わった家族の伝統を守るために、息子アルヒミロの洗礼式をのどかなエル・イエロ島で行うしかなかった。エル・イエロ島はカナリア諸島の中で最も小さな島だ。ルシアにとって狂乱の週末が幕を開ける。風変わりな自分の家族や夫の家族との対峙だけではない。息子の父親は夫ではないのではという疑いを持つルシア。本当の父親を探すべきか、それとも単にルシアの思い違いなのか。そのためには疑惑の真相を確かめる必要があった。おかしな人達と極限状態におかれた日常を描くこの小説を読んだ後、読者は自分の家族も奇妙なのではと振り返らずにはいられないだろう。楽しめること間違いなしの作品をお見逃しなく。