2019年8月、G7のサミット開催の直前に1頭のクジラがオンダリビアの海岸に打ち上げられた。富を象徴するお祭り騒ぎに水を差すための自然からのメッセージだろうか。あるいはエコサイドを続ける政府の非難を目的とした反体制グループの工作だろうか。いずれにしても40トンの動物の死骸は公衆衛生上の脅威であることに間違いない。クジラの死の原因調査と責任の所在を突き止めることが急がれる。それと並行して名も知れぬ人々の声が合唱となって同じ海を航海し、大々的なクジラ漁が始まった5世紀前へ時間を遡る。海洋の衝撃的な現状を書いた小説で、新たな環境問題を探りつつ現代が抱える倫理と政治の矛盾を突き付ける。