ムルシア、サン・フアンの夜。3人の登場人物が経験する忘れがたい物語。メキシコ人のハシントはドン・ホルヘのボディーガード。ボスがパーティに興じている間に、身内を殺した殺し屋たちと決着を付けなければならない。マリアはその夜新しい経験をして家族のゴタゴタを忘れたいと街に出かけて来たティーンエージャーの女の子。ハシントとマリアが出会う。マリアは、近所に住む孤独で謎めいた男ヒネスが、彼女がその夜いた場所をくまなく歩き回り、ドン・ホルヘのパーティに参加し、ハシントと知り合いだということを不審に思わない。独特の雰囲気や集団の中をさまよう3人の登場人物の秘密の生活をめぐる、ダイレクトで、心をつかむ物語。こういった人びとの様子や雰囲気をこれほど生き生きと描いた文学は最近あまりない。様々な人生が合流し噴出し、危険とバイオレンスにみちた夜、思いがけないラブストーリーが生まれる。