アドリアンはとても変わった青年。それは彼の行動に自閉症の特徴が見られるからだけでなく、7番目の子どもだからだ。山の伝承によると、7番目の子どもはオオカミ人間に変身するという。さらに、時々夜になると奇妙な発作に襲われるせいで、アドリアンは誰からも理解されない。そこで、村を出、今は兄セノン、兄の恋人、仲間と呼んでいる自分の犬とともにワゴン車で暮らし、スペインじゅうを放浪している。違法すれすれの商売でどうにか生計を立てながら、アドリアンは大人の世界で自分の場所を見つけようともがき、愛とセックスをおぼえていく。そして彼は一匹の黒い犬との関係によって、暴力的でめちゃくちゃな父親のためにつらかった子ども時代の自分を払拭し、再起をはかろうとする。若者が生きのびていくさまがなまなましく描かれ、読むものをひきこむ物語。若者の語りで、忘れがたい鮮やかなイメージが立ち上がる。