偶然のきっかけでグラフィックデザイナーになり、フリーランスとして仕事をするしかなかったアンナは内省的な女性で、何事につけ計算しバランスをとり、メモリをゼロにあわせて前に進むことを繰り返している。パートナーのマネル又はネル又はネレは近くて遠い存在で、必要性と怒りを彼女は胸にしまいこんでいる。あらゆるものがゆらいでいる状況の中では、物事が突然がらりと変わることがあるが、現在のバルセロナも例外ではない。経済危機の閉塞感、想定外の店子、無理強いする家族、せまられる重大な変化。アンナはどうしたら全てのバランスをとり、自分の来し方の計算をやり直し、よろいで守ってきた人生を続けていけるだろうか? それができたとしても、彼女に待ち受ける思いがけない変化はそれだけではない。現代どこにでもありがちな状況を背景に、新鮮で個性的な文体、鋭い観察力と優れた耳を活かした会話で読者をとりこにする。