ある冬の夜ひとりの男がサンタ・パウのサリェンにやって来た。間もなくマルという13歳の女の子の教師を頼まれる。このセル谷の生活は娘の家族を中心に回っていた。「この娘は消えてしまうだろう」。地下の水脈を探す天賦の才を持ち、無言で命令を下す娘の祖父の口癖だった。消えるとは?その意味を知るにはこの谷間の村の家々を結ぶ道を歩き回り、住民の暮らしを見ていくしかない。すでに多くの人が村から逃げて行き、残ったのは出るに出られなかった者だけになっていた。よそ者である男は占い師さながらに水脈の中に埋められた過去を掘り起こし、村とそこに住む人々、時代と国、伝説、そして自身についての心象を描いていく。