マリア・マルティノン=トレスは、本書を通じ読者を生物学の漆黒の闇の片隅にまで誘い込み、われわれが不完全であるというレッテルを貼ってしまったことで、ホモ・サピエンスの優れた適応力の重要な側面が隠されてきたことを明らかにする。進化論に照らし合わせると、ガン、感染症、免疫系障害、不安、心血管事故、神経変性疾患、老化、死に対する恐怖といった人間の大きな病は、変化する世の中で生き残ろうとする人類という種の闘いの変遷を物語るものだというのだ。病気やその傷跡は、ヒトが弱い存在であることを示しているどころか、人類の連帯と回復の歴史を読み解くためのいびつな線であるということを、読者は本書を通じて理解するだろう。