美しい挿絵とともに、オスカー・ワイルドの最も有名な3つの短編『幸福な王子』、『ナイチンゲールとばら』、『わがままな巨人』を収めたアンソロジー。これらの短編には、著者を最も悩ませたテーマであるエゴイズム、不平等、苦痛と、それらを愛情や憐れみ、寛容さでいかに改められるかが描かれている。アルベルト・アセンシオの美しい挿絵が入った3つの感動的な短編は悲しく物憂げにみえるが、同時に魅力と詩情にあふれている。ワイルドの作品の中には現代に照らし合わせると必ずしも的を射ていないと思われるものもあるが、彼が生きた時代背景に鑑みると、著者の才能を証明するものといえる。だがその才能にもかかわらず、彼は一部で称賛され有名となっただけで、当時の社会全体の中では受け入れられなかった。