『El primer emperador i la reina Lluna(初代皇帝と女王リュナ)』でジョルディ・クッサは至高の域に達した。中国文化においてもはや神話的な存在である魅力的な人物、秦の始皇帝のぞくぞくするような冒険小説。現実と驚異が混じり合う中国の初代皇帝の人生はホメロスの叙事詩に劣ることなく、中国文化史上類を見ない創設者として英雄の役目を果たしており、その魅力的な人物像は神性と醜悪の間で揺れる。当時の年代史にはない女性たちを創造し登場させたのは、小説ならではの成果。貪欲さを人類の害毒として記憶させるような記述、かの遥かなる帝国と近隣文化との関係を仄めかす描写など、正統派が苦々しく思うような雰囲気と登場人物の設定が印象的な作品。