ブエノスアイレス-ウシュアイアの飛行機に乗りこむ寸前、僕は遅延時間、溢れる観光客、飛び交う様々な言語について考える。待たされた鬱憤、研究のため大陸の果てに向かって飛ぶことへの不安について考える。そんなとき急に、どうしようもなくシモン・ラドヴィツキーのことが浮かんでしまう。彼は蒸気貨物船の船底で、他の惨めな境遇の男たちに交じって、埃と煙の中、鎖と鉄の棒を脚につけられて旅をした。暗闇の中の25日の船旅について僕は思いをはせる。汗、吹き出すアドレナリン、垢、ウシュアイアの刑務所に着くまでの悲惨な待ち時間。シモン・ラドヴィツキーは、檻の中に閉じ込められて21年間を過ごした。人は理想のためにどれだけ持ちこたえられるだろう? 彼を不屈の男にしているものは何なのか? シモン・ラドヴィツキーは、正義のために闘い、また普通の男に戻るために伝説の限界を超えた稀有で異例の存在だ。