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逢坂剛 氏(作家)

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スペインを舞台にしたハードボイルド小説をたくさん書いておられる小説家・逢坂剛氏のオフィスにお邪魔し、お話を伺いました。壁には西部劇のポスターが飾られ、床にはフラメンコギターが置かれたオフィスは、逢坂さんの小説世界そのものです。

 

逢坂剛氏インタビューQ:逢坂さんといえば、フラメンコギターの愛好家としてもよく知られていますが、始められたきっかけは?

逢坂:クラシックギターを17、18歳の頃から独習で弾いていたんだけれど、大学に入った頃からその限界を感じ始めてね。そんな時、神保町のシャンソン喫茶で、サビーカスのフラメンコギターのレコードを聴いて衝撃を受けたんですよ。それまでフラメンコギターというのは、ガシャガシャとうるさいだけの音楽だと思っていたんですが、サビーカスのテクニックに目からうろこが落ちましたね。その頃はフラメンコギターの先生なんて日本にほとんどいないでしょ? とにかくレコードをたくさん聴いて自分で練習しました。テープレコーダーをオープンリールで半分のスピードに落として再生して、楽譜を自分で作ったりしてね。当時は一日中そんなことばかりやってました。大学を卒業して広告会社の博報堂に入社しましたが、ファッションショーの仕事で生のフラメンコギター演奏をとり入れたこともありますよ。

趣味が高じて、だんだん本場のギターが聴きたくなってね、1971年の秋、2週間の休みをとって初めてスペインに行きました。当時はカマロン・デ・ラ・イスラという歌い手がデビューした頃で、フラメンコ界も活気がありました。その頃すでに80歳を過ぎた大御所のアウレリオ・セジェスというギタリストに会いたくてね、彼の住むカディスの町へ行き、彼の家の前の路地をずっとうろつきました。彼は僕にとっては雲上人ですから、彼の住む町を歩いているだけで有頂天になりましたね。74年に再度スペインに行ったときに、今度は勇気を振り絞って彼の家の扉を叩いてみたんですね。すると娘さんが出て来て、父は寝たきりだから会わせられないと、すげなく追い返されました。無理もなかったと思うけど、残念だったね。その翌年に彼は亡くなってしまいました。

Q:当時はフランコ独裁の時代ですが、どんな雰囲気でしたか?

逢坂:1971年の後は、1974年と翌75年にも渡西しました。当時のスペインは、政治犯だけでなく刑事犯も厳しく罰せられていたから、治安がとてもよくってね、女性一人で夜中に歩いていてもなんの危険もありませんでした。まだ町のあちこちに、内戦時代の着弾の跡が残っていました。密告制度もまだあったようですよ。私のような外国人でも、内戦についておおっぴらに質問できるような雰囲気はまだなかったですね。実際、内戦では親子兄弟が敵として戦ったケースも多かったし、人々の心の傷は深かったでしょうね。軽々しく口にできる話ではありませんでした。でもその一方で、フランコ将軍が亡くなる最晩年の頃だったため、フランスに亡命していた共産党がマドリードの目抜き通りグランビアにオフィスを構え始めたりしていて、独裁政治の末期の雰囲気が漂っていました。そういう現実を見ているうちに、スペイン内戦のことが私の頭の中でどんどんクローズアップされていったんです。それ以降はなかなかスペインに行く機会がなくってね、12年のブランクのあと87年に行ったんですが、スペインもずいぶん変わっていましたね。でもユーロを導入した後の変わりようと比べたら、大した違いはなかったのかもしれません。

Q:逢坂さんは『カディスの赤い星』や『斜影はるかな国』など、たくさんの作品の中でスペイン内戦を取り上げていらっしゃいますね。ご自身の体験を小説にしてみたいと、執筆を始められたのですか?

逢坂:最初にスペインに行った頃、スペイン文学については何も知りませんでしたし、作家になろうとも全く思っていませんでした。中学生のころから授業中に先生の目を盗んではモノを書いていたんだけど、社会人になってしばらくしてから忙しくなってやめてしまったんだな。それから30歳くらいで広報室という部署に異動になって、現場の仕事よりもいくらか楽になった。何か暇つぶしにできることないかなと思ったときに、昔、小説を書いていたことを思い出してね。何を書こうかなと考え始めたら、スペイン内戦のイメージが頭の中でどんどん膨らんでいったわけ。最初はスペイン内戦史についてノンフィクションを書かないかという話をいただいたのですが、小説という形式にした方が日本の読者にわかってもらいやすいと思ったし、その方がたくさんの人に読んでもらえると思ったんです。日本ではとかくフランコ軍側が悪くて、共和国軍が正しいと考えられているけれども、親兄弟が分かれて戦って、同じような殺戮を繰り返したわけだから、一概にどちらか一方が悪いとは言い切れない。そういうことを日本の読者にも分かってほしかったんです。

Q:スペインの文学から影響は受けてらっしゃいますか?

逢坂:たいした量ではないけれど、小説や戯曲はよく読みましたね。グスタボ・アドルフォ・ベッケルは大好きで、ほとんどの作品を読んでいます。戯曲ではカルデロン・デ・ラ・バルカ、それからノーベル文学賞を受賞したハシント・ベナベンテ、ビセンテ・ブラスコ・イバニェスなんか好きですね。でも、彼らの作品が私の小説に影響しているかというと、それはないな。マヌエル・バスケス・モンタルバンのハードボイルド小説シリーズも、スペイン社会をうまく描写していておもしろく、たくさん読んだ。でも、僕は彼の作品を読む前にもう書いていたから、影響を受けたとは言えないね。でもね、スペインでは僕の名前を言ったって誰も知らないから、「日本のバスケス・モンタルバンです」って自己紹介するんだよ。そしたら皆「へぇー」って感心してくれるんだよね(笑)

Q:最近のスペインの作品は読まれますか?

逢坂:近年でおもしろいなと思ったのはカルロス・ルイス・サフォンの『風の影』ですね。スペインの小説らしい観念的、哲学的なところが少しあったけれど、ストーリーがわかりやすく、読みやすかった。モンタルバン以降のスペイン人作家で私が読んだ中では一番おもしろかったな。ああいう小説をもっと訳してほしいですね。あと、フランシスコ・アヤラの『仔羊の頭』もよかった。スペイン内戦を舞台にした純文学風の小説なんですが、僕はおもしろいエンターテイメントとして楽しめました。ミステリーは風俗や文化と密接につながっているから、ある国の空気を知るにはその国のミステリーを読むのが一番です。ストーリーで読ませるからね。あまり観念的な小説だと、わかりにくくって、ちょっと引いちゃうでしょ? 日本はどこの国よりもたくさんの翻訳本が出ている翻訳大国だと思いますよ。日本には、戦後、アメリカのミステリーがたくさん入ってきましたが、それを読んだことが、私たちがアメリカという国をある程度理解するきっかけになったと思うんです。そういう意味で、これからスペインのミステリーなんかをどんどん出してもらいたいですね。逆に僕なんかは、日本の作家の作品も海外、特にスペインで翻訳出版されるよう、日本政府に頑張ってもらいたいなぁ(笑)。

 


 

逢坂剛(おおさか・ごう)
1943年東京都文京区生まれ。中央大学法学部卒業。1966年(株)博報堂入社後、『暗殺者グラナダに死す』で第19回オール讀物推理小説新人賞受賞。『カディスの赤い星』で第96回直木賞受賞。1997年博報堂を退社し、執筆活動に専念。スペイン近現代史についての造詣が深く、内戦当時の事件が現代と結びつく重層構造の大作が多い(下記リスト参照)。近年は、「禿鷹の夜」などの警察小説や、「重蔵始末」などの時代小説といった、多彩なジャンルの作品を発表している。

【長編小説】
スペイン灼熱の午後(講談社/1984年)
カディスの赤い星( 講談社/1986年)
斜影はるかな国(朝日新聞社/1991年)
幻の祭典(新潮社/1993年)
燃える地の果てに(文藝春秋/1998年)
イベリアシリーズ1/イベリアの雷鳴(講談社/1999年)
牙をむく都会(中央公論社/2000年)
イベリアシリーズ2/遠ざかる祖国(講談社/2001年)
イベリアシリーズ3/燃える蜃気楼(講談社/2003年)
イベリアシリーズ4/暗い国境線(講談社/2005年)
イベリアシリーズ5/鎖された海峡(講談社/2008年)
イベリアシリーズ6/暗殺者の森(講談社/2010年)
【作品集】
赤い熱気球(双葉社/1982年)(講談社/1986年『コルドバの女豹』と改題して再刊・文庫)  
幻のマドリード通信(大和書房/1986年)(文春ネスコ/2002年)
クリヴィツキー症候群(新潮社/1987年) (新潮文庫講談社文庫/2003年)
ハポン追跡(講談社/1992年)
【エッセイ・翻訳その他】
スペイン読本(福武書店/1987年)
スペイン内戦写真集(講談社/1989年)
逢坂剛のスペイン讃歌(講談社/1992年)
フラメンコに手を出すな!(パセオ/1998年)

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