Ximo Abadía著『Que nunca se acabe』の表紙
Ximo Abadía著『Que nunca se acabe』の表紙
Ximo Abadía著『Que nunca se acabe』の表紙

いつまでも

レポート執筆者:和田 優子

Yuko Wada

■概要とあらすじ

シンプルな絵に詩的な文章で綴られた読書への賛歌。しかし最後のイラストにより、これは子どもを育てることへの賛歌の意味もあるのだと気付かされる。そして、もう一度最初のページに戻って読み直すと新たな物語が浮かび上がってくる。 

本と出会い、寄り添い、読み進める楽しみ。それもやがて終わる。しかしそれはまた、いつまでも終わらない、新たな始まりでもある。

■所感

 クリーム色の地に黒と赤のみの、非常にシンプルな絵が印象的な絵本。絵の中で赤色で描かれた本が、ページをめくるごとにどんどん大きくなっていくが、それは読書が与えてくれる喜びも大きくなっていくことを表しているようにも思う。中盤、赤い本を胸に抱える女性の絵があり、最後のページにも同じような絵が出てくる。しかしよく見ると女性が胸に抱いている赤いものは本ではなく子どものようであり、そこで初めて「本」として見ていたものを「子ども」に置き換えて読むことができるということに、読者は気付かされる。シンプルな絵と詩的な文章が読者に解釈の余地を与えるような、奥行き深い作品になっている。

 装丁は、赤い本体の表紙に黒い花のようなものが描かれているが、その本体は赤い本を抱く女性の絵が描かれたクリーム色の箱に入っている。日本での出版時に箱入りの装丁にすることは難しいかもしれないが、せめてカバーはこの箱に描かれた絵にするなどの工夫で、クリーム色と赤色のコントラストは活かして欲しい。

 なお著者は 20冊以上の絵本を上梓し数々の賞を受賞している。

2011 年、バルセロナ国際漫画大会の新人作家賞候補に選ばれた。2012 年に『Puerta Amarilla(黄色い扉)』で国際 FNAC ナンセンス賞および INJUVE グラフィックノベル部門賞の最終候補、2017 年と 2021 年にはイラストがボローニャ国際絵本原画展に選出。2019 年にはニューヨーク・タイムズ紙の「今年の 10 冊」のうちの1冊に選ばれた。ミュンヘン国際児童図書館のホワイト・レイブンズには 2 度入選。2018 年には『FRANK(フランク――忘れられた独裁者の信じがたい物語)』でバルセロナ書店組合のジブラテル賞とマドリード・コミコンの最優秀絵本賞を受賞した。2023 年にはアングレーム国際漫画祭で国際グラフィックノベル賞、ジュンセダ賞 2 冠を達成。フランクフルト・ブックフェアおよびボローニャ国際絵本原画展に招待イラストレーターとして参加し、後者ではリテラ社から出版された『VERTICAL. Historia ilustrada de la escalada(垂直 登攀の歴史)』により、ノンフィクション部門で特別表彰を受けた。

■試訳

(全訳)

『いつまでも』

ずっと小さく赤いままでありますように。

いつも一緒に歩いていられますように。

あなたを落とすことのないように。

いつも月を呼び覚ますように。

いつまでも。

急いだりせず。

いつも互いを気にかけて。

私の胸で休めるように。

時が私を待ってくれますように。

いつもあなたに自由がありますように。

始まりがあるものすべてに終わりがある。

すべてはふたたび始まるために。

いつまでも。