
■概要
3億年前の地球はどんな姿をしていたのか? どうやって現在の姿になったのか?
本書では、単細胞生物から巨大な恐竜、そして人類へと続く壮大な生命の進化の物語が、魅力的なイラストとともに解き明かされていく。
また、地球の地質や気候を科学的に説明しながら、誕生から絶え間なく変化し続けてきた地球の姿が生き生きと伝えられる。バルセロナ自然科学博物館との共同制作。
2021年6月現在、9の言語(カタルーニャ語、英語、フランス語、ポーランド語、ドイツ語、リトアニア語、イタリア語、中国、バスク語)に翻訳されている。
2021年ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門スペシャルメンション受賞。
〈目次〉
01 地質にみる地球の歴史
02 過去の痕跡
03 宇宙のはじまり
04 地球の形成
05 生命の誕生
06 新しい種が地球に出現する
07 動植物が地球を制する
08 水から上がった生命
09 巨大な爬虫類の時代
10 哺乳類の王国
■内容
01 地質にみる地球の歴史
気の遠くなるような地球の長い長い歴史を、地質時代の分類にもとづいて紐解いていく。
冥王代:地球誕生から40億年前まで。地球が冷えて大気ができる。地表に水がたまる。
太古代:40~38億年前から25億年前まで。大気中に酸素が増え、生命が誕生する。
原生代:25億年前から5億4100万年前まで。水中の微生物が大きく、複雑に進化する。
顕生代:5億4100万年から現在まで。動植物が水から陸へ上がる。生物が多様に進化していく。
02 過去の痕跡
科学者たちは、古い岩や化石、地層、骨などを手がかりに地球の歴史を理解する。
岩石:地球をつくっている岩石には、地球の変化の歴史が刻まれている。
オーストラリア西部で採取された岩にジルコンという鉱物が混じっていた。この結晶の年代は約44億年前で、これまでに見つかった地殻のかけらの中で最も古い。
化石:化石は土に埋まった生物の跡が長い年月をかけてかたまったもの。化石のおかげで地球上にどんな動植物がいたのかがわかる。絶滅古代魚プリスカカラ、海中に生息したディッキンソニア、シダの化石など、さまざまな化石が発見されている。
03 宇宙のはじまり
138億年前、エネルギーがぎゅっとつまったひとつの点が大爆発した。これがビッグバン、宇宙のはじまりだ。それにより、はじめて空間と時間が生まれる。このときにできた粒子がたがいにくっついて星や銀河ができる。太陽系の誕生はおよそ46億年前。
04 地球の形成 ―― 冥王代
45億5000年前、地球は高温の球体だった。地球上にまだ生命はなく、火山や溶岩の海におおわれ、宇宙から隕石が爆弾のように降り注いでいた。やがて、地球の外側が冷えていき、周りに大気ができて地表に水がたまっていく。
05 生命の誕生 ―― 太古代
およそ35億年前、隕石の雨がやみ地球が冷えると地球上に命が宿る。大気中には十分な酸素がたまっていき、大陸が形成され、海底では細胞をもつ生物が誕生した。
06 新しい種が地球に出現する ―― 原生代
地殻は変動を続け、新しい大陸と海ができ、ロディニア大陸とよばれる巨大な大陸が形成される。この大陸は砂漠で、生物は生息していなかった。一方、海中では微生物が多様化していき、藻類などの真核生物や多細胞生物が誕生する。
多様化した微生物のうち多くは氷河期に死滅してしまったが、生き残ったものはその後、大型化し急速な進化を遂げていく。
07 動植物が地球を制する ―― 古生代:カンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀
大陸や山脈が形成され、地球の様相が大きく変わっていく。それとともに新種の植物や動物が地球上に広く生息するようになる。カンブリア紀には生物の爆発的進化が起こり、今日見られる生物の基礎ができたが、それらはすべて水生だった。
★この時代の主役たち:無顎類(脊椎動物のうち顎をもたない動物)、クックソニア、ウミサソリ、クサリサンゴ、四方サンゴ類、三葉虫
08 水から上がった生命 ―― 古生代:デボン紀、石炭紀、ペルム紀
大型の植物や昆虫などの新種の動物が地上にあらわれる。水中に住んでいた動物のいくつかは肺呼吸ができるようになり、ひれを足に進化させて陸に上がった。両生類は皮膚や肺から酸素を取り入れることで一定の時間水から出ることができたが、乾燥に弱く、卵を水中に生むため、水は必要不可欠だった。両生類から進化した爬虫類は、はじめて完全に陸上での生活を可能にした。
★この時代の主役たち:メガネウラ、シダ類、アニュラリア、アースロプレウラ、リンボク、ヒロノムス
09 巨大な爬虫類の時代 ―― 中生代
爬虫類が繫栄する。この時代を代表する恐竜は、化石になった骨のおかげでその大きさや生態を知ることができる。また、ワニ、カメ、トリなど、現在も存在する動物も多数生息していた。花をさかせる植物が出現する。
中生代の末期には過度の気候変動により、恐竜をはじめとする大型爬虫類が絶滅する。
★この時代の主役たち:ディプロドクス、イクチオサウルス、ステゴサウルス、ヴェロキラプトル、ブロントサウルス、マッソスポンディルス、翼竜
10 哺乳類の王国 ―― 新生代
恐竜の絶滅後、つぎに舞台に躍りでたのは哺乳類だ。他の生物に脅かされることなく、哺乳類はじつに多様な進化をたどる。さまざまな生息地に適応し、氷河期も生きのびた。氷河期には大型動物が生息し、有名なケナガマンモスは身長3メートル、体重3トンもあった。氷河期を生きのびた動物の多くは、氷が溶けはじめたおよそ1万年前に絶滅した。新生代末期、二足歩行ができる霊長類のグループがアフリカに生息した。それらは初期のヒト科の動物で、のちに頭脳を発達させ、ホモサピエンス、つまりヒトへと進化した。
■所感
本書を手にしてまず感じるのは、ずっしりとした重みと洗練された表紙の美しさだ。心躍らせてページを繰ると、手触りのよい上質な紙面いっぱいに描かれた、アースカラーの色調のイラストが目に飛びこんでくる。なんとも贅沢な気分にさせてくれる本だ。
太古の地球の姿が、想像力豊かに、繊細な筆致で再現されていて、ページを眺めているだけでわくわくしてくる。細部まで描きこまれたイラストは、見るたびに読者に新しい発見を与えてくれる。これほどダイナミックな光景が展開できるのは、見開きで約70センチもある横長の判型だからこそだ。もうひとつ特徴的なのは、半透明の紙を使ったページだ。紙を重ねることで下のイラストがうっすらと透けて見え、場面を立体的に見せることに成功している。一方、解説のページでは精密なモノトーンのイラストとなっていて、本全体を通してメリハリのあるつくりになっている。
本書のような知識絵本の要となる内容に関しては、バルセロナ自然科学博物館との共同制作とのことで信頼がおける。解説はシンプルでわかりやすい。当然、深堀りはされていないので、本書を入り口として興味のある分野の理解をさらに深めるのがいいだろう。
また、各章の最初のページの上部には、いま読者が見ているのは長い地球の歴史のなかのどの時期なのかが一目でわかる年表が付されている。
どのようにして地球が誕生し、どのような変化を経て、現在のような姿になったのか、その間どんな生物が地球上に生息していたのかを、映画を見るような感覚でたどっていくことができる。便宜上のジャンルは「児童書・YA」となっているが、子どもから大人まで、幅広い読者層を満足させることのできる、非常に質の高い絵本だ。画集のような楽しみ方もできるだろう。
子どもから読める知識絵本で、本書のように洗練されたアートブックのような本は日本には少ないと思う。日本での刊行が期待されるが、懸念材料もある。それはコストだ。これだけの質で80ぺージとなると、かなり価格が上がるのではないだろうか。子どもの本として販売する場合、高価な本は売れにくいように思う。その意味では、「子どもの絵本」ではなく、アートブックとして捉えたほうがいいのかもしれない。プレゼントにも向いている。広い読者層を見込める本書の邦訳版を、ぜひ刊行してもらいたい。
■試訳
05 生命の誕生(p.22~p.23)
宇宙から降りそそぐ隕石の雨がやんだとき、ようやく地球の表面が冷えていきました。火山は、まだ活発に活動をつづけていましたけれど。こうして、いまからおよそ35億年前に、地球上に生命の道が切りひらかれ、大気は酸素でみたされていきました。地上でさいしょの大陸ができ、海の底では、すべての生き物のもととなる「細胞」をもつ生物がはじめて誕生したのです。
人間の目には見えないもの
細胞は、生き物をかたちづくる、もっとも小さなまとまりで、自分で増えて成長することができます。細胞の中には、分子などのさらに小さいまとまりがあります。ひとつの細胞はたくさんの分子からできているのです。細胞は、強力なレンズを使わないかぎり、人間の目で見ることはできません。そのため、細胞や分子は「ミクロ」(とてつもなく小さい、という意味)とよばれます。
ミクロの命
01:生命のはじまりの形
細菌は、地球のさいしょの住人です。原核生物とよばれるこの小さな命は、たったひとつの細胞からできていて、原始の生物のなかでもっとも単純なつくりをしています。地球の歴史の初期にたびたび起きた大きな変化にも適応し、生きのびてきた細菌は、のちに進化していくあらゆる形の生き物のもとになっています。
02:コロニーと生態系
地上にはじめてあらわれた生命である細菌は、ひとつの細胞でできている原核生物で、さまざまな環境に適応してきました。たとえば、極端な温度や強い圧力、塩分の高い水などです。異なる場所で生きのび、住みついてきたうえに、コロニーとよばれる集合体まで形成しました。これらのコロニーのなかには、ストロマトライト(藍藻類の死骸と泥などでつくられた岩石)のもとになったものもあります。ストロマトライトは、地球上のさいしょの生態系(生物どうしのつながり)だと考えられています。
03:酸素革命
シアノバクテリアとよばれる細菌は、植物とおなじように光合成をすることができました。つまり、二酸化炭素と水を使って、自分の食べ物をつくりだしていたのです。光合成がおこなわれるときは、酸素が放出されるので、シアノバクテリアの光合成により大気中に酸素がたまっていきました。こうして、地球の環境が大きく変わることになるのです。

