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私たちを思い出すだろう

私たちを思い出すだろう

レポヌト執筆者吉田 恵

Megumi Yoshida

出版瀟

NSB幎床

2022

■抂芁 

 1794幎の倏。ゲヌテずシラヌが共に過ごし、その埌の圌らの䜜品ずふたりの関係性に決定的な意味を持぀こずになった数日間を、埌日談を絡めながら鮮やかに描く。友情の物語であり、同時に神話の埌ろに隠れた人物の倢や苊悩、心の奥底の野望、誰にも明かせない恐れの物語である。ペヌロッパ文孊においお最も圱響力のあるこのふたりの䜜家は、垞に生涯の䌎䟶である女性たちに守られおいた。圌女たちは、ずもするず完党な闇に閉ざされおしたいそうになる圌らの唯䞀の光だった。シンフォニヌのように、様々な声ず、時の䞭で絡みあうストヌリヌが、男ず女、過去ず未来を映し出す完璧な合わせ鏡ずなっお内的考察を導き、人生ず愛の密接な関係を語る。

■䞻な登堎人物

ゲヌテ   名声ず富を手に入れた文孊者。ワむマヌル公囜君䞻の私的顧問を務める。
シラヌ   ゲヌテの盟友。著名な文孊者だが生掻に困窮、病におかされおいる。
シャルロッテ・フォン・シュタむン   フォン・シュタむン男爵倫人。ゲヌテの元愛人。
クリスティアヌネ・ノルピりス     ゲヌテの内瞁の劻。埌に正匏に結婚する。
ロッテ   シラヌの劻。名付け芪はシャルロッテ・フォン・シュタむン。
ノィルヘルム・フォン・フンボルト   孊者。シラヌを気遣う芪切な友人。
ペハン・ゎットフリヌト・ヘルダヌ   孊者であり牧垫。ゲヌテの幎長の友人。
リリ゚リザベス・キュヌン   クリスティアヌネの幌銎染。
カヌル・フォヌゲル   元将校の若者。ゲヌテ家の䞋男ずなる。
シェヌファヌ   ゲヌテ家の執事。
グレタ   ゲヌテ家の料理番。
アりグスト   ゲヌテずクリスティアヌネの間に生たれた息子。

■あらすじ

第章

「出発」p13〜33

1794幎月13日、シラヌは数幎間疎遠になっおいたゲヌテから、自分の屋敷にしばらく滞圚しないかずいう誘いの手玙を受け取っおいたが、病を気にしお躊躇しおいた。生掻に困窮するシラヌ家の珟状を打砎したい劻のロッテは、シラヌを励たし送り出す。䞀方、戊争や政治に関わり創䜜から遠ざかっおいたゲヌテは、シラヌの存圚が自分を倉えるきっかけずなればず考えおいた。ゲヌテ家ではカヌル・フォヌゲルが䞋男に志願。執事のシェヌファヌは断ろうずするが、カヌルの身の䞊に興味を持ったゲヌテの内瞁の劻クリスティアヌネが雇甚を決める。

 ã€Œåˆ°ç€ã€p35〜53

1805幎月日、死の淵にあるシラヌ。ゲヌテは未だ顔を芋せない。1794幎月14日、シラヌは友人ノィルヘルム・フォン・フンボルトに䌎われゲヌテ家に向かう。フラり゚ンプランの屋敷やその暮らしぶりは豪華で、自分ずの境遇の違いを思い知る。歓迎の晩逐で早速意芋をぶ぀け合い、胞の内を探り合うゲヌテずシラヌ。ふたりは性栌も考え方も正反察だった。䞀方、クリスティアヌネは正匏の劻でないため息子ずずもにその存圚を消すこずを䜙儀なくされるが、興味に駆られ晩逐の郚屋を芗き芋する。そしお、ゲヌテは己の欲求を満たすためだけに盞手を必芁ずしおいお、その盞手は今、自分ではなくシラヌなのだず知る。

 ã€Œã‚«ãƒ¯ã‚»ãƒŸã€p55〜67

1805幎月日、シラヌにはゲヌテが必芁なのに、ゲヌテは死を恐れ珟実から逃げおいるず嘆くロッテ。1794幎月15日、前日の疲れで倕刻に起床したシラヌは、自分の代衚䜜『矀盗』を愛読曞ずし、察仏戊争の亡呜者だずいうカヌルにシンパシヌを感じる。曞斎ではゲヌテが、姿を芋せないシラヌに痺れを切らしおいた。シラヌがやっおくるず、ふたりはカワセミの骚栌暙本を前に、動物ず人間の違いに぀いお論争を繰り広げる。

 ã€Œã‚ªãƒ¬ãƒ³ã‚žã€p69〜79

 1805幎月日、もうシラヌに回埩の芋蟌みはない。1794幎月16日、料理番のグレタが台所で仕事をしおいるず、執事のシェヌファヌがやっおきおクリスティアヌネを芋䞋す発蚀をし、オレンゞを食べ始める。オレンゞはグレタに幌い頃叔父から受けおいた性的虐埅を思い出させる果物だった。クリスティアヌネの境遇を自分ず重ね同情するグレタ。シラヌの存圚により疎倖感を感じおいたクリスティアヌネは、幌銎染のリリを呌び寄せる。

 ã€Œäœ¿ç”šäººãŸã¡ã€p81〜88

 1805幎月日、ロッテの名付け芪でゲヌテの元愛人シャルロッテ・フォン・シュタむンはゲヌテに手玙を送り、死にゆくシラヌず向き合うよう促す。1794幎月17日、ゲヌテはシラヌが病を隠しおいるこずに気づき動揺する。シラヌはゲヌテの腹が読めず、いただ文孊に぀いお話し合えおいないこずにやきもきする。䜿甚人たちの倕食の垭では、カヌルの自由な振る舞いず発蚀が物議を醞しおいた。

 ã€Œæ£®ã€p89〜98

 1805幎月日、熱を出し寝蟌むゲヌテを看病するクリスティアヌネ。そこにシラヌの死を知らせる手玙が届く。1794幎月18日、ゲヌテずシラヌは銬車で森に出かける。深い森の䞭で銬車を降り、自然の玠晎らしさを満喫しながら語り合う。ゲヌテはシラヌず考えを共有できるこずに喜びを感じおいたが、突然シラヌが倒れおしたう。

 ã€Œå‚·ã€p99〜109

1805幎月日、倫の死に盎面し途方に暮れるロッテは、倫の怜死に同意を求められる。1794幎月19日、医者がシラヌに瀉血を斜すが、シラヌは自分にはもう治療の手立おはないず語る。シラヌの郚屋を蚪れたゲヌテは、䜓が匱く死んでいった匟を思い出しおいた。

 ç¬¬ïŒ’ç« 

「血」p115〜130

1805幎月10日、ゲヌテ家の図曞宀でシラヌの怜死が行われる。ゲヌテは息子のアりグストに立ち䌚いを頌むが、非嫡出子ずしお匕け目を感じる圌は隠れおこっそりず芋守る。1794幎月20日、シラヌの様子を芋に行ったクリスティアヌネは、郚屋に充満する病人の匂いに、貧しさの䞭で兄ずふたり父を看取った日を思い出す。シラヌに頌たれ、ゲヌテの元愛人が名付け芪ずいうロッテに手玙を曞くこずになるが、その胞の内は耇雑だった。

 ã€Œãƒ¯ã‚€ãƒ³ãšé¡˜ã„」p 131〜146

1794幎月21日、アりグストが庭で乳母ず遊んでいるず、ゲヌテがシラヌずやっおくる。父が自分の存圚を疎んじおいるず感じるアりグストは、父の気を匕こうずボヌルを投げる。シラヌを酒蔵に案内しようずしおいたゲヌテは、息子を同行させる。自慢のワむンを倧切に扱う父を芋お、ワむンになりたいず思うアりグスト。その日、カヌルはゲヌテの蔵曞ぞの興味から図曞宀に䟵入する。そこでクリスティアヌネず鉢合わせするが、ふたりでいるずころをゲヌテずシラヌに目撃されおしたう。そしおゲヌテ家にリリが到着。クリスティアヌネは圌女に苊悩を吐露する。ふたりは蟛い過去を共有し、特別な絆で結ばれおいた。

 ã€Œå€§ããªæœšã®äž‹ã§ã€p147〜159

1805幎月12日、クリスティアヌネがいくら説埗しおも、ゲヌテはシラヌの葬匏に行こうずしない。1794幎月22日、倜䞭に目芚めたカヌルは、シェヌファヌが酒蔵からワむンを盗んでいるずころを目撃する。リリずクリスティアヌネは秘めた過去を感じさせるカヌルに興味を持ち、タロットでその身の䞊を占っおみるのだった。散歩に出かけたゲヌテずシラヌは、倧きな菩提暹の䞋にある川岞のベンチに座る。ゲヌテは、その堎所で嵐のような瞳を持぀クリスティアヌネず出䌚い、か぀おの情熱を思い出したず告癜する。

 ã€Œãƒ€ãƒ³ã‚¹ã€p161〜173

1805幎月12日、ロッテは嚘の手を匕き、シラヌの葬列に加わっお歩いおいる。隣を歩く姉カロリヌネは、実はシラヌが心を通わせた盞手だった。1794幎月23日、ゲヌテは曞斎の机の秘密の匕き出しにしたっおある元愛人シャルロッテの金髪を眺めおいた。そこにこれからシャルロッテを蚪問するずいうシラヌがやっおきお、ふたりの関係を知った䞊でゲヌテに付き添いを頌む。ゲヌテはそれを断り、自䜜の詩を披露するのだった。クリスティアヌネはリリず畑の収穫をしおいたが、突然ダンスを螊り始める。たるで様々な苊悩を解き攟ずうずするかのように、くるくるず回りながら。

 ã€Œã—なびたむチゞク」p175~184

1805幎月30日、シラヌの葬匏以来、ゲヌテは曞斎にひきこもり、倜になるず子䟛のようにクリスティアヌネに慰めを求める。父ずの関係に悩むアりグストは毎晩酔っ払っお垰宅しおいた。1794幎月24日、ヘルダヌ倫劻はゲヌテがシラヌのために催す晩逐に招かれる。若いゲヌテの才胜をいち早く認めたヘルダヌだったが、牧垫の生掻は苊しく、今や裕犏で高慢になったゲヌテを苊々しく思っおいた。

 ã€ŒæˆŠäº‰ã€p 185〜199

1806幎10月15日、フランス軍がワむマヌルに進撃、砲匟の音がひっきりなしに響き、フラり゚ンプラン呚蟺も爆撃の被害を受ける。ゲヌテは家から出ようずしない。突然人の兵士たちがゲヌテを探しお家に抌し入っおくる。銃口を向ける圌らの前に立ちはだかるクリスティアヌネ。その時、兵士のひずりがカヌルだず気づく。カヌルは圌女の勇気に免じお䜕もせず立ち去る。1794幎月25日、クリスティアヌネはリリず川蟺で語らいながら、財産目圓おで近づいたゲヌテを今では愛しおいるこずにあらためお気づく。カヌルはシェヌファヌの暪暎に蟟易ずし、独裁制を倒すためなら自分は再び歊噚を取るだろうず考える。

 ã€Œçµ†ã€p201〜213

1806幎10月21日、シャルロッテはロッテに、自分のように過去の思い出の䞭で自分を芋倱うなず諭す。ゲヌテずクリスティアヌネは遂に正匏な倫婊ずなっおいた。1794幎月26日、ヘルダヌ倫劻がフラり゚ンプランに到着。晩逐埌はカヌド遊びに興じ、論議に花を咲かせおいた。その時、シェヌファヌが酒蔵のワむンが行方䞍明だず告げる。カヌルを疑う執事に、蚌拠はあるのかず詰め寄るシラヌ。盗みをはっきり吊定したカヌルだったが、ヘルダヌの劻は問題があるものを家に眮いおはならないずゲヌテに耳打ちする。

 ã€Œç·‘の䞘の䞊で」p 215〜221

1816幎月30日、クリスティアヌネはゲヌテず過ごした日々に満足しながら最期を迎えようずしおいる。1794幎月27日、解雇されたカヌルが郚屋で荷造りしおいるず、クリスティアヌネがやっおきお圌を匕き止める。君は匷い女性だ、君を朰そうずする人々の意のたたになるな、ず蚀っお去るカヌル。結局、ワむンを盗んだ犯人はアりグストだった。

 ã€Œé ­è“‹éªšã€p 223〜230

1826幎月15日、ゲヌテは共同墓地で骚が掘り起こされる様子を眺めおいる。その䞭にシラヌのものず思われる頭蓋骚があった。あらためお圌に盞応しい立掟な墓を甚意するずいう垂長に、ゲヌテはそれたで頭蓋骚を自宅に持ち垰りたいず申し出る。1794幎月28日、フラり゚ンプランを去ろうずするシラヌは、クリスティアヌネに感謝の蚀葉を口にする。そしおその嵐のような瞳に、か぀お愛したカロリヌネの面圱を感じるのだった。

 ã€Œã‚šãƒ”ロヌグ」p 231〜234

1827幎月10日、ゲヌテはシラヌの頭蓋骚に語りかけながら、フラり゚ンプランで共に過ごした日々を懐かしむ。君は僕を生たれ倉わらせおくれたんだ。

■所感・評䟡

舞台はフランス革呜の䜙波で戊乱が続く18䞖玀末〜19䞖玀初頭のワむマヌル公囜。䞻人公はゲヌテずシラヌずいうドむツ叀兞䞻矩文孊を代衚するふたりの巚匠。それだけで我々の日垞ずはかけ離れた物語が繰り広げられるように思われるが、著者は史実ずフィクションを巧みに織り亀ぜ、䞻人公ず圌らを取り巻く人々の愛情や欲望、嫉劬、疑念、苊悩が耇雑に亀差する、普遍的でリアルな矀像心理劇を䜜り䞊げた。実際にふたりの創䜜掻動に圱響を䞎えたずいう1794幎の数日間を、登堎人物たちがやり取りする曞簡、1805幎のシラヌの死を䞭心ずする埌日談によっお倧きく膚らたせ、読者が様々な男女の過去や未来を俯瞰的に捉えられるようにした構成は秀逞である。

本曞はゲヌテずシラヌの友情の物語であるが、色々な圢をした愛の物語でもある。ゲヌテず元愛人シャルロッテ、ゲヌテず内瞁の劻クリスティアヌネ、ゲヌテず息子アりグスト。自己䞭心的なゲヌテはい぀も愛を欲しおいたが、愛を䞎えるこずは䞍埗手だった。シラヌず劻ロッテ。シラヌは劻ずしおロッテを遞んだが、実は最期たで粟神的に繋がっおいたのは姉カロリヌネの方だった。クリスティアヌネずリリ。その匷い絆は、同性愛的な匂いたで感じさせる。いずれにしろ印象的なのは、愛にもがき苊しみながらも、男性たちの垌望の光ずしお匷く生きる女性たちの姿である。特にクリスティアヌネはこの物語のもうひずりの䞻人公ず蚀っおもよいだろう。矩母に疎たれ、酒に溺れる父の怒号が飛び亀う貧しい家庭で育ち、生き延びるためにゲヌテを利甚する。しかし正匏な劻でないこずで奜奇の目にさらされ、䞊流階玚の人々だけでなく䜿甚人にたで蔑たれる。ゲヌテの愛も䞍確かだ。それでもゲヌテず息子を守り、自尊心を倱わず、顔を䞊げお生きようずする姿に読者は魅了されるはずだ。たた、カヌルずいう架空の人物も忘れ難い。知的でミステリアスな若者は物語のあちこちでさざ波を立お、読者の心もざわ぀かせる。事実の本質を理解する手助けずしお、実圚の人物に着想を埗た架空の人物を配眮したず著者は語るが、その詊みは成功しおいる。

 ドむツの囜民的文孊者の物語ずいうこずで、スペむン語の本である必然性が若干匱くなっおしたうが、著者の力量を感じる倧倉魅力的な小説である。ゲヌテずシラヌの埀埩曞簡は有名だが、ふたりの間の、たた圌らを取り巻く女性たちずの間のヒリヒリするような関係を生々しく描いた小説は芋圓たらない。DVや性的虐埅、いび぀な芪子関係、ゞェンダヌなど珟代に通じる問題を考えさせられる内容でもあり、スペむンずいうよりも海倖小説ずしお日本で翻蚳出版される䟡倀はあるだろう。著者のカルラ・ガルシアは1980幎バルセロナ生たれ。カタルヌニャ囜際倧孊のラむティング講垫であり、カタルヌニャ語地䞊波デゞタル攟送局フィブラカットの文章講座番組『癜いペヌゞ』のディレクタヌも務める。初めおの小説『Siete días de Graciaグラシアの䞃日間』2014幎はむタリア語ずポヌランド語に翻蚳され、ロヌマ図曞展のアルゲロ・ドンナ文孊ゞャヌナリスト賞を受賞した。

■詊蚳 p 229〜230

 シラヌは手玙を読み返した。自分の卒倒や死ぞの接近を劻に語りたかった。クリスティアヌネが぀た先で朚の床を歩く音、少しだけ開いた扉、嵐のようなその瞳。カブのクリヌムスヌプ、カヌルの闘争心、カヌルの解雇ずいうゲヌテの遞択。いや、それらはシラヌにずっお胞にしたうべき人生の闇だった。倢ず同じく、蚀葉は党おをがかしおしたう。手付かずのたた、敎然ずした珟実から遠く離れた、真実に満ちたそれらの印象を保぀必芁があった。

扉が開き、その考えは䞭断された。

「入っおもいいかい」ゲヌテは返事を埅たず、すでに入っおきおいた。

 シラヌは立ち䞊がった。

「もちろん。劻に手玙を曞いおいたんだ」

 ゲヌテは明らかに緊匵した様子で郚屋を歩き回っおいた。

「もしよければ、もう少しここにいおもらっおもいいんだが」

 シラヌは机から手玙を拟い䞊げお、曞類入れにしたった。

「そうしたいのはやたやただが、む゚ナで家族が埅っおいるのでね」

「もちろんだよ、可愛いロッテは君がいなくお寂しいはずだ。倫婊ずはそういうものだよ」

シラヌは手玙を぀かむ手をずめ、ゲヌテを芋た。別れを告げないで、論争したい誘惑に駆られおいた。

 「倫婊には䜕があるんだ」

ゲヌテは窓に向かっお歩き出した。

「人を瞛る力」

シラヌは埮笑んだ。

「君も瞛られおるよ」

 「同じ状況じゃない」

 以前からゲヌテは傑出しおいお、尊倧で、匷い意志の塊のようだった。シラヌは埮笑んだ。もしゲヌテの望みがこうやっお戯れるこずなら、圌を気萜ちさせずに枈むかもしれない。

 「それはそうだ。君の堎合、その関係においお君の方が匷い。だから君が必芁ずする自然な愛から遠くなっおしたうんだ」

 ゲヌテは笑った。「ここにいおほしかったよ」

 「病人でも」

ゲヌテは頷いた。

 シラヌはロッテの譊告を思い出した。耐えるべきなのはわかっおいたが、ここを去る前にゲヌテに質問する必芁があった。そうでなければ心穏やかになれない。

 「君がカヌルを解雇したず聞いたんだが」

 ゲヌテは窓の方、広堎の朚々の方に目をやった。颚の匷い日で、枯葉がぶ぀かり合い、地面たで回りながら萜ちおいった。

 「いずれにせよ、ここは圌に合わなかったんだ。戊争に戻るだろう、圌の堎所にね」

 「戊争はもう我々みんなのものだよ。時代は倉わり぀぀あるんだ。」

 ゲヌテは燃えるような瞳でシラヌの方を振り返った。

 「恐らくそうだ。でも数幎経った時、それでも人々は僕たちを思い出すだろう」

 シラヌはゲヌテの光に惹き぀けられるのを感じた。

 「僕はこの時間を君ず分かち合えお嬉しかったよ」

 そしおふたりは沈黙した。向かい合っお戞惑いながら、息を朜めお。