深く魅力的な文体で、恋をした状態について考察する小説。ほぼだれもが恋愛を有益なもの、ときには救済とさえ考えるがゆえに、恋愛においては、高貴で無欲な振る舞いから、大いなる横暴や下劣さまで、ほとんどすべてのふるまいが正当に思えるものだ。本書はまた、事実の恐るべき力と無処罰についての本であり、また、どれほど嘆き、戻ってきてほしい、少なくとも生きていてほしいと強く望んだとしても、死者を生き返らせるわけにはいかないこと、真実を正確に知ることは不可能なこと、絶えず揺れ動き、変化する私たちの思考の真実さえ知ることができないことについて語った本でもある。