マリアナ・エンリケスの世界は私たちの世界とは無縁のようだが、読み進めるうち最後は自分のものとなる。数行でもその世界に足を踏み入れ、空気を吸ったならば、生き生きとした感情表現のとりこになり、忘れられなくなる。細分化され悪夢となった日常に読者はうちのめされ、ストーリーやイメージに感情をかき乱され、それらが頭から決してはなれなくなる。例えば、「激越な女たち」と自称する集団は、ウイルスと化した重度の家庭内暴力に抗議する。爪をはぎ取り睫毛を引き抜いてしまう女生徒と、彼女を助けようとするクラスメイト。政府の独裁の暗い年月に中毒になり、死によって引き裂かれる3人の女友だち。ペティソ・オレフードという、たった9歳の連続殺人犯。引きこもり、黒魔術、嫉妬、失恋、田舎の迷信、廃屋など。