1975年11月1日から2日にかけての夜、ピエル・パオロ・パゾリーニはオスティアの海岸で無残に殺害され、ヨーロッパ全体を震撼させる。検視結果は複数犯の存在を示していたが、ひとりの若者が犯人として有罪となる。犯罪学者の女性と男性教員が真相の究明に乗り出す。ふたりが目をつけたのは、マフィアと石油王エンリコ・マッテイの不可解な死について書いたパゾリーニの未完の小説『石油』だ。著者はパゾリーニが『命ある若者』で描いたような少年たちとローマの街を巡り、パゾリーニの生涯と、その悪魔たちー文学作品、映画作品、フェリーニやサルトル、モラヴィア、エルサ・モランテなど、時のアーティストや知識人との交流、揺るぎない政治思想ーについて、スリリングな小説を仕立てあげた。