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Kai Nagase

Kai Nagase

長瀬 海

Kai Nagase

インタビュアー、ライター、書評家、桜美林大学非常勤講師

千葉県出身。インタビュアー、ライター、書評家、桜美林大学非常勤講師。文芸誌、カルチャー誌にて書評、インタビュー記事を執筆。「週刊読書人」文芸時評担当(2019年)。「週刊金曜日」書評委員。翻訳にマイケル・エメリック「日本文学の発見」(『日本文学の翻訳と流通』所収、勉誠社)共著に『世界の中のポスト3.11』(新曜社)、『韓国文学ガイドブック』(Pヴァイン)がある。

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個人的にも文学的にも変わる時期の最中にあったこの小説の語り手は、ドアや隣の部屋に印を目にするようになった。それは自分とパリ、カシュカイシュ、モンテビデオ、レイキャビク、ザンクトガレン、ボゴタを結ぶ印で、これまで話したくて仕方なかった体験談の数々を文字にして人生の図版にしたいという思いを主人公に取り戻させていく。現代の特徴のひとつである両義性を題材にした大いなるフィクション。自身の最高傑作といえるこの作品の中で、著者はすでに言い尽くされたと思われた事柄に新たな名前を付ける方法を見つけ、また彼の作品の中核が小説の現代化に他ならないことから、称賛に値する偉業である。

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モンテビデオ

Montevideo

エンリケ‧ビラ=マタス

Enrique Vila Matas
MB Agencia Literaria

不動産会社で熱心に働く女性が空き家になっている物件の内覧準備をしていると、まばたきをしない7歳の少年と出会う。ガラス瓶の中の虫のように昔からこの場所に捕らわれている少年は、女性に何かを期待しているがそれを言葉にすることさえできず、ふたりの間に不気味で完全なる相互依存関係を作り上げてしまう。この「幽霊の出てこない幽霊小説」で、見事な腕前によって人間の親密さを分析してみせたバルバ。幽霊小説のスタイルに寄せつつ、自身の写実主義的な文体にさらに磨きをかけている。時間の重なりと交差に満ちたこの小説は、そのテクニックの正確さから、ヘンリー・ジェイムズやアドルフォ・ビオイ=カサーレスが書いた幻想小説の名作と通じるところがあるが、リンドクヴィストやシャーリイ・ジャクスンの美学と同様、叙情性、繊細さ、残酷さに富んだ現代的な作品と言える。

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前世の最後の日

El último día de la vida anterior

アンドレス‧バルバ

Andrés Barba
Casanovas & Lynch Literary Agency

「毎日の我らの酒よ、昼も夜も我らを見放すことなかれ」毎朝サンドゥンガはこう唱え、その日の最初の酒を1杯飲むと、気の向くまま過ごすために家を出る。欲望も目的も持たず、流れ任せの人生だが、それ自体がこの面白い小説の筋になっている。あるひとりのメキシコ先住民があるがままに世に出るが、様々な出来事に巻き込まれる。素晴らしくもない日常のせいではないが、大抵の場合不幸な出来事だ。そしてその様子は常に酩酊状態の彼の視点で語られる。つまりこの小説は同じく酔っ払いが主人公でメキシコを舞台に展開するマルカム・ラウリーの『火山の下』やスペインの小説家エクトル・バスケス=アスピリの『Fauna(ファウナ)』と類を成す。悲壮感や哄笑を誘うだけでなく、驚くほど生き生きとした読書体験をもたらす小説。

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サンドゥンガ

Sandunga

マテオ‧ミゲル

Mateo Miguel
Drácena Ediciones