偽りの伝統の断片を散りばめ、そこに一見相反するメカニズムを混ぜるボーダーレスな記述。読者が導かれるのは故意に歪められた非現実の日本だが、著者は発明や神話で彩られたその列島を庇護する。寓話、詩、物語風エッセイを集めた本書は、著者の個人的な歩みに時間、空間、様式、記録(仏教の経典からアニメーション映画まで)を組み込んだ奇想天外な旅だ。物語と余談、メモと注釈、詩とアフォリズムが荒唐無稽なモザイクを作り、ユーモアと神話、パロディーと崇拝をミックスしながら「師匠」と「弟子」の関係に切り込んでいく。