この物語の主人公は車いすに乗った小さな女の子と道端で生まれたメスの子猫。理由はそれぞれ違うけれど、ふたりは家から出るのが怖い。外に出ないでいると、人生が通り過ぎるのを窓から見ているだけ、外の世界には入っていけないような気がしてくる。女の子は毎晩お話をするが、実感はこもらなかった。なにしろ、外に出るのが怖くて、そんな経験はできないのだから。けれどある日、外を見ると、カタツムリが植木鉢に上るのに四苦八苦していた。少女と子猫は気づいたら庭に出てカタツムリを助けていた。そのとき少女は、怖いことは何も起こらないと気づく。その日から、女の子が子猫に毎晩語るのは彼女自身の話になった。わたしたちはときどき、自分の話に限界を設けて夢を阻む壁を作ってしまうことがある。