『アディオス・ノニーノ』の音符、オランダのウィレム王太子との結婚の際にマキシマが流した涙、招待客の写真の中に見つかったドイツの銀行家の娘で危険な活動家の姿。そして波乱のマラソンレースがスタートする。現在のヨーロッパに存在する外国人恐怖症と超国家主義の動きに着想を得て書かれた小説。主人公は警察から強力なネオナチ組織の計画を暴く依頼を受ける。その組織のリーダーたちもマラソンランナーで、主人公がアンデスで不慮の死を遂げたジャーナリストの妻から貰ったシューズと同じものを履いて競技に参加していた。病みつきになるカルトミステリーというだけではなく、しっかりした参考資料を基に、冒険活劇と歴史小説、サスペンスと紀行ものの素晴らしい部分を品よく、かつ巧みにまとめ上げている。