70年代のアルゼンチン。労働組合は過激左翼によって牛耳られている。ひとりの製鉄所幹部を乗せたヘリコプターが川に墜落し、彼は死亡する。現金が詰まった彼のアタッシュケースが跡形もなく消える。彼の死と現金の行方に関する憶測が飛び交う。組合の代表と交渉? 彼らを買収? 大勢の死者を出すことにつながる不法な鎮圧のための資金? 物語は暗いエピソードを軸に展開し、そのドラマの核はコスタ・ガヴラス(映画監督)風に使われ、家族をめぐるこの小説においてお金の役割を見直すこととなる。語り手の父親はポーカーやカジノで金を「作り」、水を得た魚のように金融投機の世界を奔走する。彼の母親は相続したわずかな財産を贅沢な生活と別荘に浪費する。際限なく増える出費、それを支払うのは彼だ。