そもそも音楽形式を構成しうるあらゆる形式のなかで、フーガはもっとも厳格で内に閉じているように思われる。このフーガ形式のあらゆる異なった演奏を通してみると、作品全体の基調や主題を選ぶ始まりから、主題の展開、完結まで、全体が管理され統御されていることがわかる。私たちは分析を試みることで、作曲家がこのフーガという音楽形式をつくりあげられるようになることを目指すと同時に、非合理的で「不確かな」要素が、一見厳格に見えるこのフーガ形式の道を切り開くに違いないことを訴えたい。