「年寄りになっても在りし日の子どものままだわ」自嘲を込めて言った。この小説『El olor de las olas(波の匂い)』の主人公アウロラの台詞だが、誰にでも当てはまる言葉だ。『El olor de las olas(波の匂い)』は他でもない思い出の匂い。ちょっとした言葉やコーヒーを入れたカップを包み込んだ感触、自転車で行った散歩、ひとかけらのケーキ、その時々に私たちの心に永遠に刻まれた思い出。『El olor de las olas(波の匂い)』はある女の物語であるが、それは直ぐに自分の物語となる。なぜなら、アウロラの人生も、私たちの人生も、基本的にすべての人生に大差はなく、愛、希望、情熱、友情、悲しみ、喜びといった感情は誰の中にも存在するのだから。生きることになった場所や時は単なる心の覆いに過ぎない。ページ毎に自らの姿を見ることになるだろう。