本書は、詩人ルル・ソトゥエラのバランス良い短編集で、フリオ・シルバが挿絵を描いている。これら25編の短編に共通する特徴は、深い心理表現、人間の不安、ブラックで辛辣なユーモアである。それに加え、Les discours du Pince-Gueule (パンス・ゴールのスピーチ、1966年)、 La vuelta al día en ochenta mundos (80世界一日めぐり、1967年)、 Último round (最後のラウンド、1969年)などフリオ・コルタサル作品の挿絵を手がけてきた、80歳を超えるフリオ・シルバの挿絵により、かけがえのない1冊となった。我々人間をめぐる存在の問題に、著者は優しく、人間的に、深く、そしてユーモアを持って向き合い、どの短編も楽しく、健康的で、興味深い体験になっている。知性と繊細さをもって書かれた物語で、的確で絶妙な筆運びにより、我々は登場人物の内面に入りこみ、感動し、楽しみ、心をふるわせる。