「互いのことを意識するばかりで街の様子も殆ど目に入らぬまま、彼らはセーヌ通りを歩いた。ジャンピエールは好感を持たれたい一心で、案内人としてそのあたりの珍しいものを説明し、彼女は黙って聞いていた。歩道が狭くなったところでお互いの手が自然と触れ合った気がした。肌と肌が。彼はゾクッとした。日陰のテラスに大勢の観光客が座っているブシ通りに曲がり、すぐにサンジェルマン通りに出た」セーヌ左岸で画廊を経営するジャンピエール・サナルディは自由人。バルセロナで家族と落ち着いた暮らしを送っているパウリナ・オムスは、いとこの結婚式に参列するためパリにやってきた。