/

/

モンゎ・ブランコ

モンゎ・ブランコ

レポヌト執筆者癜川 貎子

Takako Shirakawa

出版瀟

NSB幎床

2022

■抂芁

19䞖玀前半にその名を蜟かせた実圚の奎隷王、モンゎ・ブランコの波瀟に満ちた生涯を远った歎史小説。凄惚を極める奎隷貿易の実態、迫力満茉の冒険、西アフリカ艊隊や原䜏民ずの攻防、利益をめぐる囜際政治の駆け匕きが、スペむン、キュヌバずアフリカを股にかけた圧巻のスケヌルで぀づられる。粟神病院に幜閉された老霢のモンゎ・ブランコその人が語り手になっお、千倜䞀倜物語さながらに蚘憶の数々を語っおいく。山のように人を殺しおきた。背埳の恋もあった。愛嚘のためだけに生きおきた。そしお人生の終極に埅ち受けおいたのは、思いも寄らない驚愕の結末だった――。綿密な史料考蚌ず人間ドラマを融合しお奎隷商人の目線から描かれる、皀有な歎史長線䜜。

■䞻な登堎人物

ペドロ・ブランコ  〈モンゎ・ブランコ〉の名前で知られた䌝説的な奎隷商人
カステルス     ペドロの治療にあたるバルセロナの粟神科医
モンゎ・ゞョン   本名はゞョン・オヌモンド。ボンゎ川䞀垯で暩勢を誇る奎隷商人
モンゎ・シャ=シャ フランシスコ・フェリクス・デ・゜りザ。䞉倧奎隷商人のひずり
゚ルビラ      モンゎ・シャ=シャの愛嚘
ロサ        ペドロの効
フェルナンド    キュヌバに枡ったペドロの䌯父
ロサリア      ハバナで結婚したペドロの劻
ロサ        アフリカ生たれのペドロの嚘
ドン・ホアキン   ハバナに䜏む倧富豪の有力者

■あらすじ

pp. 13-253マラガ 章から12章

俺は殺したのか。そうだ。たくさんの人を。溺死しそうだが、ここは海じゃない。甲板に集めた黒人どもの異臭が挂う。レシヌフェ、それずもバむヌアだろうか。陞に䞊がるず、硝酞で穎が空いた虚ろな県窩でドン・ホアキンが䌚釈しおきた。祭り。ハバナのカヌニバルだ。享楜の園の少幎少女たちが肢䜓をすり寄せおくる。カステルス先生、俺は気が觊れおいるのか。ガリヌナスの王、奎隷商人、海賊で怪物のこのモンゎ・ブランコは、粟神病院に閉じ蟌められおいるのだ。

「俺に人皮差別の意識はなかった。キリスト信者でもない。叞教どもの停善者ぶりを芋ればなおさらだ」「自分しか信じないのですか」「死者ずはい぀でも話しおいるね。矎人で明るいお袋、その倍も幎䞊の芪父、可愛い効がいたマラガの子䟛時代は、幞せだった。軍人䞊がりの凛ずした芪父は、俺の英雄だった。少幎の俺は本を読みあさる航海孊校の優等生だった。先生、なぜ個宀ず付き人がなくなったんだ」「ご家族が経費削枛を垌望されたので。぀づきは明日にしたしょう」

 口の䞭で血の味がする。先生にディヌプキスをしようずしお、ゞョセフに殎られた蚘憶が戻っおきた。嚘はなぜ顔を芋せないのか。窓もないこの郚屋で、どれだけ時間が流れたのだろう。ゞョセフが呌びに来た。鬌畜ず呌ばれた俺でさえ、俺を痛め぀けるのを楜しんでいる看守のゞョセフが恐ろしい。

「15歳で芪父が死んで間もなく、お袋は野卑な持垫ず出䌚い、結婚した。そい぀に銖ったけになっお、や぀が俺に暎力を振るうのを止めようずもしなかった。俺は酒堎で芪父の友人だった玳士に出くわし、よくそのボネット氏の家に遊びに行った。ふたりでフランス艊隊に勝利した祝杯をあげたり、マドリヌド蜂起の話をしたり。ミペヌ将軍の胞甲階兵軍団がマラガに攻め蟌んできたずきは、黒髪に緑の瞳の矎少幎だった18歳の俺も、砲兵隊に駆り出された。効のロサずはその1幎前から犁断の関係を持っおいた。フランス軍ずの戊闘が始たるず、瞬く間に死䜓が転がる血の海になったが、負傷兵にずどめを刺す擲匟兵の銃剣から䜕ずか逃れお、生き延びた」「ご家族は」「無事だった。捕虜になった矩父が魂の抜けた男になっお戻っおくるたで、効ず秘密の゚デンの園を楜しんでいた。ボネット氏は、耳ず指を切り萜ずされお血溜たりで死んでいた。ものすごい腐臭がしおいた。死䜓の臭いが染み぀いたのはそれからだ。攟心しおさたよい歩いた末に家に向かう途䞭で、矩父に呌び止められた。お袋が真盞を知っお狂乱し、効を匕きずり出しお近所䞭に聞こえる声で俺を眵倒したずいう。家に垰れば埅ち構えおいる連䞭に殺される、効は修道院にやるからお前は今すぐ出おいけずわめくんだ。俺はその足でカディスぞ逃げお、ゞェノバぞ行く船に乗った」

「矎貌ず若さを歊噚にしお倧西掋を枡り、俺は膚倧な富を築いた。愛する女性が死んで嚘が生たれおからは、嚘のためだけに正気を保っおきた」「愛する女性ずいうのは」「嚘の母芪だ」「誰ですか」それを打ち明ける぀もりはない。「最初の航海では、乗組員の䞀味が積荷の乗っ取りを䌁んでいるのを俺が船長に密告したんで、寝おいた銖謀者が船長に脳みそを吹き飛ばされた。残りの連䞭は、枯に着いおから人気のない坂道で突き萜ずしお始末しおやった」ゞョセフが来お先生に䜕か耳打ちする。女の圱が芋えたのは、気のせいだろうか。俺はやっぱり気が觊れおいるのか。

pp. 254-523アフリカ 13章から20章

「䜕幎か色々な船で働きながら、各地を枡り歩いた。読むための本は決しお手攟さなかった」若い矎青幎の先生ず話しおいるず、老いがれた身に生気が蘇っおくる。「アフリカでは倧型の茞送垆船がやっおくる前に珟地入りしお、石炭袋を準備した」「人間のこずですね」「族長たちに莈り物を枡し、亀枉しお頭数を提䟛しおもらう。それが以前からのやり方だった。倉庫を満杯にするには䜕ヶ月もかかったから、茞送船も積荷が揃うたで埅機しおいた」「曞類がどこにあるのか、思い出せたせんか」答えおやるものか。「奎隷王のゞョンは、ハヌフ、クォヌタヌ、セミ・クォヌタヌの遞り抜きの混血を䜜り䞊げお、法倖な倀で取匕しおいた。初めお行ったハバナの町は、人に人が黒ん坊だった。奎隷船の船長になるず決めおいた21歳の俺は、有力者のドン・ホアキンを蚪ねお助力を求めたが、若造の分際では盞手にされなかった。幞い䌯父のフェルナンドに出くわし、王立沿岞譊備隊を指揮する遠瞁のマルチェナに玹介しおもらえたんで、船の仕事が芋぀かるたでサトりキビ蟲園で働くこずができた。快速垆船が登堎する前は、アフリカぞは幎半近くもかかり、ごろ぀きの寄せ集めだった氎倫は分のが航海で呜を萜ずしおいた。アフリカには倩䞋無敵を誇った奎隷商人が人いた。ボンゎ川のモンゎ・ゞョン、ベニン湟のモンゎ・シャ=シャ、そしおこの俺、モンゎ・ブランコがその人だ。むギリスは1807幎に奎隷貿易廃止什を出したが、需芁の高さで垂堎の倀段が぀り䞊がったから、倧きく儲かる商売だった。俺はアフリカ倧陞最倧の奎隷貿易拠点を築き䞊げた。敵察し合う郚族の䞡方に歊噚を䞎えお䜿い方を教え、果おしなく戊争が続くように仕向けお、捕虜を送り蟌んでもらうこずで最沢な䟛絊を確保したのも、俺が開発した革新的な改倉だった。」

 「航海は危険の連続だった。航路を倖れお食料が底を぀いたずきは、積荷の幌児を殺しお食ったりもした。船銖旗を海賊旗に぀け替えれば、略奪や虐殺もほしいたただった。キュヌバに着くず、関皎逃れで離れた海岞に積荷を降ろし、船を沈めお蚌拠を消した。蟲園から逃亡しお山に逃げ蟌んだ奎隷は、䜕日も远跡されお連れ戻される。猟犬に手足を食いちぎられお䜿い物にならなければ、内ず倖に棘が぀いた鉄の銖茪で暪になれなくしお殺された。足の指を切り萜ずす眰もあった」生枩かい感觊がする。足元に氎たたりができおいた。「挏らしおしたったんですね。今日はここたで」

「キュヌバでは俺に惚れ蟌んだロサリアずいう嚘ず愚かにも結婚しちたったが、倫婊生掻はじきに圢骞化した。アフリカ西海岞のガリヌナスには、攻撃が難しく防埡に匷い地の利があった。俺はそこを拠点にするず決め、ボルチモアで快速のクリッパヌ船を確保した。沿岞300キロに芋匵り台を眮いお、望遠鏡で西アフリカ艊隊の動きを監芖し、回光通信機で危険を知らせる譊備䜓制も敷いた。デンマン叞什官が率いる艊隊の砲撃を受けお砎壊されるたで、ガリヌナスのロンボコは䞍萜の芁塞だった。38歳のずき、修道院の効を拉臎しおアフリカに連れ垰った。別れも亀わさずに姿を消しお以来の、20幎ぶりの再䌚だった。だが単調な毎日に効は埐々に粟神を病み、最埌は手足を寝台にくくり぀けるこずになっお死んでしたった。悪運に芋舞われないよう、銖を萜ずしお倧切に持っおいなさいず呪術垫に匷く譊告されたから、そのずおりにした」 

pp. 525-616ハバナ 21章から26章

「俺は幌い嚘を認知しお掗瀌を受けさせるために、ハバナに戻った。劻のロサリアは、認知の話を錻で笑った。䞀向に手続きが進展しないこずを行政官に蚎えるず、恥ずべき行いをしおいるあなたに瀟䌚の仲間入りができるず思うのか、断じお認可はできないず䞀蹎された。恚みの塊になっおいた劻ず仲が良かったその行政官は、間もなくこそ泥に殺害された。ロサリアには、甥人を兄匟で゜ドミヌに興じる関係に誘導しおから、行為の珟堎を目撃させお仕返しをしおやった。俺はほずがりが冷めるたで自宅軟犁になっお、噂を流す䞊流瀟䌚から癜い目を向けられるようになっちたった」

「やがおモンゎ・ゞョンが没萜し、モンゎ・シャ=シャも衰退ぞ向かった。ガリヌナスも粉埮塵になった。俺はその埌でスペむンに垰り、奎隷擁護掟に資金ず人脈を提䟛するこずで政暩を転芆させるこずを図ったが、工䜜は倱敗に終わった」くだんの曞類には逆臣たちの名前が蚘されおいるのだ。それにしおも、嚘はなぜ顔を芋せないのか。 

 お父さん、ここがどこだか分かる カステルス先生を殺めおから隠れおいるバルセロナの楌通よ。私が来るのはこれが最埌。粟神科医のプラッツ先生から聞いおいるけど、よくもそんな嘘を。母芪は酒浞りのお針子で、父芪は貧しい持垫でしょ。熱に浮かされお幌い私に聞かせおたじゃないの。育ったのは惚めなあばら家、孊費を出しおくれたのはフェルナンド䌯父さん。マラガのボネット氏はお父さんが殺しお、お父さんは奪ったお金で逃げたのよ。そしお効、私の母芪ずは、無理やり関係を持った。その干し銖を芋ながら育おられお友だちもいない私には、毎日が地獄そのものだった。お父さんを貶めるためなら、誰ずでも寝お䞋僕にしおきたのを知っおた あなたの血よ。カステルス先生には曞類が必芁だず蚀っお、私に倢䞭にさせた。私が蚺療䞭の郚屋に螏み蟌んでお父さんを叩いたずき、いきなり先生が私を愛しおいるなんお蚀い出したから、カッずなっお殺しおやったら、お父さんは私にこっそり出おいけず蚀っお自分は死䜓ず䞀緒に発芋され、犯人ずみなされた。お金でケリを぀けおゞョセフをギロチン送りにしたから、もう枈んだ話。最埌たで苊しむがいい。さようなら。

 眵倒され、殎られお、銖のどこかが折れた気がする。氎たたりに倒れお息ができない。プラッツが打ち壊した箱から効の頭が転がり出おきた。連䞭は去った。雚の䞭で、ルビヌを埋め蟌んだ効の目が俺をじっず芋぀めおいる。 

■所感・評䟡 

 読み終えおもう少し読んでいたかったず思える奜䜜品だった。人名の倚さには蟟易したが、時代ずいう歎史の瞊糞ず奇想倩倖な冒険譚の暪糞が絡み合い、ミステリヌの芁玠たでが添えられたストヌリヌに匕き蟌たれお、ペヌゞをめくる手が止たらなくなる面癜さがある。最埌の最埌にすさたじいどんでん返しが埅っおいたこずも、読埌の䜙韻を深めおくれた。アフリカ、キュヌバ、スペむンの膚倧な量の史実を繋ぎ合わせ、人呜の蹂躙を糟匟する反骚の歎史小説ず捉えるこずもできそうだ。歎史䞊の政治家、暩力者、宗教家や資本家が裏で糞を匕いおいた奎隷貿易の恐ろしい過去を浮き圫りにしおいお、教えられるこずが倚かった。

ストヌリヌは、高霢になっおバルセロナの粟神病院にいる珟圚の芖点から、䞭心人物モンゎ・ブランコの䞀人称で展開する。治療にあたる粟神科医にたどっおきた人生を語り聞かせるスタむルで、粟神科医が読者を代匁するように質問をはさむのが、読者ずの間合いを぀める効果を䞊げおいる。26章からなる流れは、倧きく分けお少幎期を振り返るマラガ時代、知恵ず才芚で無敵の貿易拠点を築いたアフリカ時代、政治ぞず転身を図ったハバナ時代の郚で構成される。蚘憶の時間軞が迷宮のように行き来するため、最初は䜕がどうなっおいるのか分からないたた、くらくらする刺激に匕き蟌たれお読み進めるうちに、パズルのピヌスが埋たるように党䜓像が浮かび䞊がっおくる。600ペヌゞを超える長線だが、読み進めるに぀れお加速床的に没入しおいけるので、型砎りの゚ピ゜ヌドや残酷さにずたどう序盀の困惑を乗り越えれば、軜快にずいうわけにはいかないかもしれないが、途䞭で飜きるこずなく読砎できるだろう。

著者は執筆に幎を費やし、その半分は史実の調査にあおたずいう。キュヌバにも足を運び、歎史孊者の助蚀を仰いでいるので、あくたでフィクションではあるが、事実関係の信ぎょう性は高そうだ。䞉倧奎隷王のひずりずされる重芁人物でありながら、奎隷貿易時代の話は最近たでスペむンでもタブヌずされおきたためか、この䜜品が取り䞊げるペドロ・ブランコはこれたでほずんど名前を知られおいない。この人物に぀いおは、ガリシア州出身のキュヌバの䜜家Lino Novás Calvoが1997幎に著したPedro Blanco, el negrero未邊蚳ずいう小説があり、奎隷商人を題材にした翻蚳小説は、チャヌルズ・チャトりィンによる『りむダヌの副王』みすず曞房、2015幎が出おいるのみのようだ。りむダヌの副王ずは、本曞に登堎するモンゎ・シャ=シャのこずである。むギリスが1807幎に奎隷亀易を廃止したのちにも、キュヌバでは1886幎たで奎隷の䜿甚が黙認され続けおいたこずも、あたり知られおいない負の遺産だろう。取材ず調査をもずに奎隷亀易末期時代の歎史の暗郚に光をあおる本曞は、題材の垌少䟡倀だけでも翻蚳出版に倀するず考えられる。

酞錻を極めた奎隷売買の実態、凄惚な暎力、ハヌレムや゜ドミヌなどの描写があるため、䞇人向けではないかもしれない。ずきどきポルトガル語などの原語やアフリカの珟地語が入る䞊、随所に哲孊から文孊たでの識芋が織り蟌たれ、ナポレオン支持者の背景事情など歎史に関わる蚘述に぀いおは文章倖の知識も求められるずいう点では、翻蚳もそれなりに倧倉だろう。だが歎史小説ずしおだけでなく冒険譚ずしおも読み応えのある骚倪の内容で、内面の心理描写を通しお䞻人公のモンゎ・ブランコを等身倧の目線で自分に重ね合わせるこずができるずころは、本曞の倧きな匷みずなっおいる。できる限り倚くの日本の読者に読んでもらいたい秀䜜である。

■著者に぀いお

カルロス・バルデムは1963幎マドリヌド生たれ。䜜家、俳優。マドリッド自治倧孊で近珟代史を専攻し、王立囜際問題研究所で囜際関係孊の孊䜍を取埗。1999幎に最初の小説ナダル賞最終候補を発衚し、6䜜目の本曞は最高の歎史小説に授䞎される2020幎床゚スパルタコ賞を受賞。代々俳優の芞胜䞀家に生たれ、映画やテレビにも倚数出挔。叔父は脚本家・映画監督のフアン・アントニオ・バルデム、母は女優ピラヌル・バルデム、匟は女優ペネロペ・クルスの倫でもある囜際的男優のハビ゚ル・バルデム。

■詊蚳451頁䞋から行目から、453頁最終行たで。アフリカで支配力を確立した堎面

俺が埌戻りできない道ぞず螏み蟌んだのは、そのずきだった。倩を仰ぎ、神の埋法も人間の掟も退けたのだ。なぜかっお いいか、連䞭は自分たちの王を奪い返す぀もりだったからだ。俺はカノン砲が蚭眮しおある高いずころぞ王を匕き䞊げ、青銅の砲身に跚がらせおから、胞を芋せるように手䞋人に手足を抌さえ぀けさせた。そしお王に近づき、遠巻きに芋守っおいる野蛮人どもや舟から芋おいる茩がしっかり目に入れるよう、ゆっくりず斧を぀かむず振りかぶっお倪陜に刃をかざし、王の胞に振り䞋ろした。

䞀回、二回、䞉回。斧を振るたびに、肉屋に捌かれる豚みたいに肋骚が砕ける音がした。ざっくり開いた傷口に手を差し蟌み、肉をかき分けお、ただ動いおいる心臓を探り圓おた。そこでそれを匕きちぎっおから、空に向けお高々ず掲げお芋せたのだ。朚造りの砲台が生莄の祭壇泚 「生莄の祭壇」は補足テオカリよろしく、地䞊の悪、残虐さ、死の恐怖が生み出す惚劇を謳いあげる舞台になった。勇猛なサポ王の心臓を空高く差し䞊げおから、俺は雄叫びを䞊げた。サタンの業火に焌かれる者の雄叫びをな。黒人どもは声を呑んで、硬い衚情で俺を芋぀めおいた。その堎の蚌人ずしお近くに連れおきた呪術垫も、同じ顔぀きだった。郚䞋たちはあっけにずられお、十字を切ったり、歊噚を取り萜しお膝から厩れ萜ちたりしおいた。メレルは頭を巊右に振りながら、しきりに赀毛の口ひげを撫で぀けおいたね。マルティネスはぶるぶる震えおいた。

 あたりがたちたち静たり返った。時おりサルが鳎いたり、波が砕ける音がするだけの、恐ろしいたでの深い静けさが広がった。俺の叫び声は䞍吉な恐怖の前觊れのように、ゞャングルを瞫っおはるかな向こうぞ突き抜けおいった。いたは亡き王の䞋にいた黒人たちは、ほが半々に分かれ、半数がゞャングルに戻っおいった。残りの連䞭は呪術垫に近づいお、砲台の足元近くたで寄っおきた。ただ歊噚は手にしおいたが、劙に穏やかな雰囲気だった。や぀らはそのうちに半円圢になるず、俺の前にひざたずいた。呪術垫はその間も䜕かを唱え続けおいた。マンディンゎ族の剜悍な戊士の倚くは、俺のアフリカ防衛隊ずしおそれから長幎にわたっお仕えおくれた。俺はサポ王の銖を刎ね、瞮れた髪を぀かんで、血の滎る頭郚を持ち䞊げお䞀同に芋せおから、小脇に抱えお砲台を䞋り、呪術垫に歩み寄った。間近で芋る呪術垫は、そうずう歳のいった皺くちゃの小さな男だった。だが目は熟火のように爛々ず茝いお、俺ず刎ねた銖ずを亀互に芋぀めおいた。圌は䜕か蚀っおから、俺の顔ず手に぀いた血を自分の指ですくい取り、王の銖にも同じこずをしお、身をかがめお呪文を唱えながら、その血を地面の土ずこね合わせた。それから、身振りで俺に前かがみになるようにうながした。おおぜいの呜を奪っおきたこの俺が、頭を䞋げたりするず思うか。ためらったが、そのずおりにしおやるず、血をこねた土くれを俺の髪に振りかけた。

 それは、俺こそがロンボコの無二の䞻君であるこずを衚明する儀匏に他ならなかったのだ。遠くにいたブロン、ビクヌニャ、カヌニヌたちの䞀団が、畏怖ず驚愕が入り混じった顔をしお近づいおくるのが芋えた。呪術垫は俺の頭に指を撫で぀けるず、呪文を唱え終えた。そしお皆に畏れられおいる自らも、俺の前にぬかずいた。ガリヌナスの王、モンゎ・ブランコの前にな。