「モルテロスは簡単に理由もなく洪水になった」本書は、この一文から始まる。アルゼンチンのモルテロスの村の現実と、少女ビドリアの魔法のような想像力という二つの世界にまたがる、催眠術のように読者をひきこむ物語だ。水に漂う棺桶、屍のようなミラノ風カツレツ、世の終わりを思わせる牛、突然変異の少女たち、ハーレー・ダビッドソンと名乗る男等々は、モルテロスの日常における間違いない主人公の一部である。そんな中で、ビドリアが成長し、生きることを学ぶさまが、シルバナ・ボクトの制御不能の創意と豊かな語り口を通して語られる。子どもたちが楽しい夢、こわい夢を見るように、ボクトはいともたやすく、ユーモアと驚きに満ちたさまざまな心温まる場面をあざやかに結びつけてみせる。