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私のガイド、私のキャプテン
■タイトル ぼくのガイドさん、わたしの隊長さん Mi Lazarilla. Mi Capitán
■著者 ゴンサロ・モウレ(文) Gonzalo Moure
マリア・ヒロン(絵) Maria Girón
■出版社 カランドラカ Kalandraka Editora
■出版年 2020年
■ページ数 40ページ
■読者対象 5才以上
■レポート作成 長神未央子
■概要
視覚障害のある父娘の学校への道のりはジャングルを冒険する旅のよう。横断歩道は大きな川にかかる橋。街を走る車の上には動物の姿が。街のあちらこちらから顔をのぞかせるたくさんの動物たちに見守られながら、二人は手をしっかりつないで学校への道を歩いていく。
本作品の文章を書いたジャーナリストで作家のゴンサロ・モウレは、特に社会的なテーマで作品を発表しており、1993年にIBBYオナーリストに選ばれるなど、児童書分野で高い評価を受けている作家だ。
イラストレーターのマリア・ヒロンは、10数冊の絵本を出版しており、イタリア語、英語、韓国語などにも翻訳されている。
■所感
本書では視覚障害のある子どもの何気ない日常生活の中にある冒険が描かれている。目がほとんど見えない小学生の女の子、そして全盲のその父親。二人は学校へ行く道のりをジャングル探検と捉え、互いを「ぼくのガイドさん」「わたしの隊長さん」と呼び、さまざまな想像を膨らませながら通学している。女の子は、全盲であるにもかかわらずまるで見えているかのように周囲の状況を把握している父親を誇りに思っており、父親と娘の温かな心の交流が優しい色遣いのイラストで表現されている。二人の通学を見守るカラフルな動物たちは愛嬌があり、ページのあちこちにいる動物たちを探しながら読むのも楽しい。二人が車の走行音を聞いて車名を当てる「アニマルカークイズ」では、例えば「ジャガー」なら車の屋根上に動物のジャガーが乗っているイラストが描かれており、二人の遊びの様子がユーモラスに表現されている。通学路にあるものを何かに見立てて想像を膨らませるというのは日本の子どもたちにもなじみのあるものであり、視覚障害のある子どもの世界が親しみやすく表現されている。
韓国語版、中国語版の出版に向けた動きも進められており、アジアでも注目を集める作品だ。
■試訳
冒頭~p11まで
学校へ行く途中、パパと私はたくさんの光と影、音でいっぱいの森の中を歩いていく。
パパとアニマルカークイズをするの。
「あれはフィアット・パンダ」
「ほら!ビートルだよ!」
「ジャガー!ジャガー!」
「この音はセアト・レオンかな」
いつの日かシボレー・インパラの音を聞いてみたい。
フォード・マスタングが町中をかけ回る音も!
パパの手の中に私の小さな手。
わたしは目がほとんど見えなくてパパは全然見えない。全盲なの。
パパは目が見えないけど、わたしより、世界中のだれよりずっとたくさんのものが見えてる。
「今目の前を横切って行った人、悲しそうだったね」
どうしてパパにはわかるの?
「気をつけて。街灯だよ」
パパの言うことはいつもその通りだった。