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池澤夏樹氏インタビュー

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Natsuki Ikezawa2011年2月21日、丸の内のスペイン・レストランで、作家の池澤夏樹氏にスペインや、スペイン語圏の書籍についてお話を伺いました。前夜、オーチャードホールでマリア・パヘス舞踊団のフラメンコを鑑賞されたというお話で盛り上がった後、早速本題に入りました。

Q:スペインにはいらしたことありますか?

池澤:ぼくは1975年からギリシャで暮らし始めたでしょ。30歳の誕生日を前に、どこかヨーロッパの小さな国で暮らしたくなって、どこにしようかと考えた。その国の言葉を覚えて読むものがある国、文学がある国がいいなという基準で国を選んだんですよ。スペインも魅力的だったけれど、でもやっぱり政治がネックになりました。スペインは当時まだフランコ政権だったから。それでスペインには住まなかったし、スペイン語も身につけなかった(笑)。イタリアやフランスやイギリスはみんなが行ってるところだから、最初から考えもしなかった。先進国はあまり好きじゃないんだな。それで結局ギリシャにしたんです

―― レストランの壁に飾られた闘牛のポスターを目にして

池澤:あ、闘牛のあのポスター、ぼくも持ってる。ギリシャに住んでいる間に一度スペイン旅行に行って、マドリード、セビーリャ、コルドバを周ってね。マドリードで闘牛をみたんだけど、倒れた牛をみて、当時1歳半の娘が「大きなワンワン、寝ちゃったね」って言ってね(笑)。闘牛場の外であれと同じようなポスターを買ったら、闘牛士たちの名前が書かれた下に、娘の名前をスタンプで押して入れてくれた。そういうサービス。

Q:スペイン文学との出会いは?

池澤:ギリシャにいたときは、アテネの小屋でよく芝居を観ました。夏は観光客用にギリシャ悲劇を野外劇場でやっている役者が、冬は小屋でフェデリコ・ガルシア=ロルカなどの現代劇をやるのね。そのロルカがいいんですよ。あの時のは『ドン・ペルリンプリンとベリーサ姫の庭園の恋』だった。それを観て感心したんですよね。地中海圏には不思議な共通のメンタリティーがあって、ギリシャとスペインでも似てるんですよ。ギリシャ国立劇場の役者たちのロルカがすごくいいの。『血の婚礼』とか芝居もよく読んだし、闘牛士『イグナシオ・サンチェス・メヒーアスへの哀悼歌』も好きな詩ですね。最初にスペイン文学に本気になったのがロルカで、それをきっかけに、ロルカに代表されるスペインが好きになったんです。その横にはたとえばジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』があった。

Q:最近のスペイン文学は?

池澤:スペイン本国で書かれた純文学の作品にはぼくはまだ出会っていません。このところ好きになったのが、ミステリーのカルロス・ルイス=サフォン。彼の『風の影』は面白かった。長い書評も書きましたよ。それからサンティアーゴ・パハーレスの『螺旋』もよくできていた。ぼくはね、10年くらい前から急にアメリカのミステリーが嫌いになって。社会における暴力の比率が高いアメリカが嫌になって、そういう本を手に取る気がしなくなったのだと思う。その代わりにヨーロッパのミステリーを探し始めた。イギリスはもちろんたくさんあるけど、その他だと、フランスも悪くない。このところおもしろいのは北欧。そんなふうにヨーロッパのミステリーを読んでいるうちに『風の影』が出てきて、そうか、スペインを舞台にしてこういうミステリーが作れるのかって、夢中になりました。今、スペイン語から日本語に訳してほしいジャンルっていったら、ミステリーですね。エンターテインメント。ぼくはよく飛行機に乗るんだけれど、飛行機の中で読むのはエンターテインメントと決めているから。

Q:1960年代以降、日本では中南米文学ブームがありましたが、特に印象に残っている作品はありますか?

池澤:それはもうガブリエル・ガルシア=マルケスに尽きる。ガルシア=マルケス・ショック。それから始まったブームにはずいぶん恩恵をこうむりました。『百年の孤独』を読んでなかったら、ぼくは『マシアス・ギリの失脚』など書けなかった。それ以来、南米文学全般はずっと読んできましたし、いつも気にしてます。日本の他の作家たちも、そんなに直接的ではなくても、南米文学をみんな横目で見ていますよ。

それから、今スペイン語圏全体で一番おもしろいのがチリ人のロベルト・ボラーニョ。ぼくはまだ彼の『通話』しか読んでないんですよ。でもあれだけで驚いた。大作『野生の探偵たち』は本気で取り組むべき作品だと思って、まだ読まずにとってあります。中南米にはコロンブス以来、いいことも悪いことも含めて非常に錯綜した500年分の歴史があるわけでしょ。そこからボラーニョみたいな人がポッとでてくる。ぼくは外国文学が好きでいっぱい読んできて、だから『世界文学全集』の個人編集などという仕事もできたわけだけど、マリオ・バルガス=リョサは『世界終末戦争』のような長いのもしっかり読んだし。リョサや、イサベル・アジェンデ、カルロス・フエンテス、みんな全集に入れました。ラテンアメリカは歴史も厚いし、人種もさまざまだし、言語もいろいろ混ざってきたわけだから、それだけ文学の土壌として豊かだと思いますね。だからそこからいろいろな花が咲くのは当然でしょう。結局のところ、新しい文学というのは、書きたいことを持っている人の手にペンが渡った時に書かれるんですよ。戦後は独立した植民地の人たちがどんどん書いた。それから、女性たちが力を得て書いた。その中でスペイン語圏の寄与はとても大きかった。

Q:スペインでも独裁政権が終わった後に、「モビーダ」と言われる、それまでとは180度反対のパンクっぽい文化が生まれました。それを代表するのが映画のアルモドバル監督ですが。

池澤:『トーク・トゥ・ハー』の監督ね。あれは好きだった。『オール・アバウト・マイ・マザー』もよかった。ああ、そうですよ、アルモドバルはスペインだ。ぼくは現代スペインについては文学より映画の方をよく知ってるかもしれない。古くはブニュエル、それからビクトル・エリセがいて、カルロス・サウラも見たし、文学より映画の方が元気だな、というのが現代スペインの印象ですね

Q:日本人にスペイン語圏の文学は合いますか?

池澤:合います。アメリカのエンターテインメントは生産量では大きいかもしれないけど、真面目な文学で世界をずっと見渡してみると、スペイン語圏はすごいと思いますね。アジアはまだ文学と言えるほどのものがない。ようやくタイとかベトナムとかインドネシアとかで少し出てきたけれど、層が厚い南米とは比較にならない。中国は国が大きいしそれなりにいい作家もいるけれど、南米にビッグネームが10人いるところに、中国は2人くらいですよ。あそこにはまだ文化大革命の傷が残っているし。アフリカも英語で書かれる場合が多いから、英語圏の文学と一緒に含まれる。あきらかにスペイン語圏文学は本屋でも確固たる幅を占めていますよ。これからも日本語訳でスペイン語圏のおもしろいものをどんどん読ませてもらいたいですね。楽しみにしています。

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