1998年1月、アナ・マリア・マトゥーテはスペイン王立アカデミーで《En el bosque(森のなかで)》と題した入会の講演を行った。言葉でできたその場所から物語の語り手は、明瞭な声で子どものころから魅了されてきた世界を披露した。聴衆の前に生き生きと立ち上がったのは、作家としての軌跡に常に寄り添ってきた映像や人物、すなわち秘密のささやき、暗がりにひそむ目に見えない命、世界の中心の住民たちの声。今回の刊行は講演の原稿と著者のバイオグラフィーを収めた小冊子に9枚のイラストカードがついたバージョン。カードは自由に組み合わせて並べることができるので、森のなかのシーンや物語を無限に創り出せる。繊細さとアンティミスムの描線が特徴のオドリオゾーラがイラストを描いた本書は、作家がインスピレーションを受けた妖精物語の宇宙発生論にオマージュを捧げている。