逃亡した裁判官、麻薬中毒の兵士、自らすすんで盲人となった者たち、見張りの老女たち。バリェ・サムロではすべてが変異し、だれもが、そしてなにもかもが見かけをうらぎる。本書は、カラカソとして知られる暴動のあった1989年のベネズエラ(カラカス)を舞台にした小説。読者は、錯乱した世界に引き込まれ、豊かな集団経験を体験する。喜劇から悲劇へ、滑稽さから崇高さへと、さまざまな相克する感情の中を走りぬけるジェットコースターのような小説。時に勇敢で時に子どもっぽい若き主人公アレハンドロ・ロカは、社会のタブーと慣習に立ち向かい、優しくも暴力的かつ残酷な幻の街で、否応なく成熟していく。ひとつの世代の物語。