セリアは退院したばかり。脳卒中に襲われ昏睡からさめた後、記憶を部分的に喪失していた。自分の家も覚えていない。真実から彼女を守ろうとする娘に付き添われ、リハビリをし通常の生活に戻ろうと努めている。それは、セリアの生活習慣、取り巻く環境の再発見となるだろう。そこから自分の世界を再構築し、家族や友人を知り、自分が何者だったのかを見つけていくのだ。今の自分は別人のように思える。強い性格で、ふたりの子供と孫娘を持つ、離婚歴のある女性ジャーナリスト。忠実な犬が一匹、中米出身の家政婦がいる。今セリアには多くの空白ができた。それを嫌な出来事で埋めるのが怖い。コンピューターの中にある彼女のドキュメントを開けることのできるパスワードを見つけるのが急務だ。手がかりになるだろう≪たったひとつの言葉≫。忘却と、そして私たちを定義づけている周囲の人々がいかに大切かについて絶妙な感情的緊張感をもって描く、激しいと同時に抒情的な小説。