FCバルセロナは、単なるサッカークラブをはるかに超えた存在だ。カタルーニャの人にとってのアイデンティティ、誇りであり名誉、進歩主義と反抗のシンボルなのである。
本書は中立的な立場に立ちながら、歴史、言語、政治の側面からクラブの本質をとらえる。世界のビッグクラブのなかで類を見ないほど、FCバルセロナは民主的政治組織にも近い、その原点に忠実であり続けている。チームの資金源である17万人のソシオによるプライベートメンバーズクラブではあるが、カタルーニャ人全体が自分たちのものという意識を持っている。バルサ・ファンであることは生きる姿勢であり、哲学だ。スポーツがコマーシャリズムに植民地化される現代において、この独特のアイデンティティが生き残っていくための闘争が本書の中心テーマである。サッカーにほとんど興味がない人にも読んでほしい、本質的で示唆に富むスポーツの一面をとらえている。