2008年にチリのランサジャマス社とメキシコのフス社で最初に出版された本書『種の日記』は、チリ人作家クラウディア・アパブラサがこれまでに発表した小説の中で最も興味深い作品である。著者が影響を強く受けた作家は、エンリケ・ビラ=マタスとロベルト・ボラーニョのふたり。もっと正確に言えば、『バートルビーと仲間たち』と『野生の探偵たち』の2作である。本書はブログとそれに対するコメントの形態をとり、そのやりとりがしだいに増大していく。また、最後に「人物一覧」という項目が添付され、その息苦しいほどの文字の羅列はまるで寓意的な暗号である。どこか航海日記に似た趣もある。仮想のウェブ世界の中を航海する船には、ブログの書き手が提起する小説に関するさまざまな問題がちりばめられ、そうした問題に対するバーチャルスペースの訪問者のコメントを通じて、無数の声の主の横顔が描きだされる。